演奏会感想の部屋

 

 

 …いや、いかん。これで終わっちゃいかんな。ちゃんと感想を書こう。


 「合唱団まい」感想つづき。

 ヴィクトリアの「Introitus」は、曲の最初から熱い!濃い!
 最初の一声からその熱い声が響く!
 流れの中にも張りつめた緊張感の持続があり、
さらにその中へ祈りの表出がある。

 マドリガーレ集からは
 「Ecco mormorar l'onde」は出だしが重たい?…と思ったら
茎から離れ、落ちた花の映像が、突然スローモーションになり
落下しながら音の花弁が広がる。いくつもいくつも。落ちながら。咲き誇る。

 「Si ch'io vorrei morire」
 灼熱。激情の炎。
 「…もし私が愛する人に抱かれて死ねるものなら!」
 半円状になった“まい”から熱風が吹き。ステージが燃えて。

 後の2曲はなめらかに、軽やかにこのマドリガーレを締める。

 正直に書くと、「コンクールじゃなくて良かった!」という演奏でもあります。
 特に「Ecco〜」なんかは全日本、今年度の課題曲ですが
一部では熱狂的に支持されても、全体では
「…う〜ん」という空気が流れるような気がします。

 でもねえ、曲の様式感とか構成とかはともかく、
歌っている最中、女声のひとりが、体を動かしたんですね。
 それがどういうものかというと、
 「この曲を歌う!」という体の芯から出たものが、
全体を駆けめぐり、音として放出するだけでは足りず、
身悶えするように、動きとなって腕に頭に体に出てしまった、という感じで。

 個人的にそういう姿というのは引いてしまうことが多いのですが、
今回はなぜか、とても伝わってしまって。
 ありがちな、体を動かしてしまうほど歌ってしまう『自分に酔う』、のではなく。
(それは自分が「お姫様」や「王子様」になっているのでしょう?)

 「わたしはわたし。わたし以外の何者でもないの。
  でもこれがわたしのすべて!」

 …そんな、自己肯定、なんて浅薄な言葉を超えて伝わってくるものがありました。

 個々に「わたしはわたし」を体現しながらも、
合唱団としてのひとつの音も同時に感じさせてくれる「まい」。
 聴く者の、体の芯へ力を与えてくれる演奏でした。


 あと、コンクールじゃないから無理な注文かもしれないけれど、
「Vine」に続いて「まい」の「Sicut cervus」も聴いてみたかったなあ!
 いやホントに、ここまで対照的な団体を続けて聴いたのは初めてです。

 「あやつり人形劇場」は何気なく聴くと明るい雰囲気なのに
背筋に寒気が走るほどの冷たさを。
 旋律の粘る感触と奇妙なほどの女声の明るさとの対比が、
夜の暗さと黒い眠りへの傾斜を感じさせてくれました。
 深い、深い曲だというのを再認識。
 クレー、谷川俊太郎、三善晃、そして雨森文也、まい、すごい。





 『クール・シェンヌ』(奈良県橿原市)
 男声11人・女声17人。
 女声が前の一列、男声がその後ろに一列、という並び。
 上西一郎先生の指揮で。
 トライアングルは植田幸生さん。

 Ave Verum Corpus (I.Raminsh:作曲)
 「3つの歌」より Vineta (J.Brahms:作曲)
 「どちりなきりしたん」より1,3(千原英喜:作曲)



 「Ave Verum Corpus」は、はじまりの女声に、“歌”、だなあと感心して。
 複数人の声を合わす「合唱」になってしまうと、
どうしても歌が薄まってしまう部分があるもの。
 しかしシェンヌのこの女声はしっかりと“歌”になっている。
 声楽の歌唱を合唱に適応させると、
どこかに無理が出る時もあるが、
この演奏はその声楽的な歌唱の良い面だけが出ているような印象。

 合唱としても全体の柔らかい、優しい響きは健在で。
 表現の何気ないところで、聴く者の表情をほころばせ、
気持ちを温かくさせる「歌を愛する心」がある。

 Vineも優しく柔らかく温かいけど、
シェンヌは年輪を重ねた、人間としての奥行きがある感じ。
 ・・・うん、やっぱり「ちょっと甘口、ぬる燗の日本酒」だ!

 男声の表現がやや奥に引っ込んでいるのと、
まだ「決め事」を忠実に実行しているような雰囲気もあって。
 練習で言われたことを一生懸命やろう、
ああできたよかった!…も良いけれど
このステージの上だけ、「いま」音楽を作って欲しい、という気も、します。


 後半の盛り上がりに「ぐっ」ときて、眼を思わずつぶってしまう。
 素晴らしいソプラノ。
 そしてラミンシュの抒情はいいねえー!

 「Vineta」は音楽の広がりが心地よく。
 流れに乗り、リズム、律動が耳から入って体を動かす!

 「どちりなきりしたん」はひとつの流れを保ちながらも、
それぞれの音楽の意味がとても出ていて。
 以前聴いたものより、日本語のニュアンスも優れ、
曲の開始から終わりまでの流れとして説得力を感じさせる演奏。
 (トライアングルは客演が正解ですね)

 全く個人的な好みとしては、その流れの中に、
場面転換をもう少し感じさせてくれると嬉しいような。
 しかし、大変優れた演奏だと思います。


 演奏前に上西先生は
 「宝塚ではあまり良い成績を収めていないので、
  私達なんかが呼ばれて良いものでしょうか…」
という意のことを語られていたけれど、
全日本での好成績はもちろん、シェンヌの実力はもはや皆が認めるところ。
 そして今回の演奏全体も、その「認められる」ことによって、
表現の底に確固たるもの、自信、プライドによって高まった美意識、
…のようなものが以前よりも私には感じられました。

 「私なんて…」という謙虚な態度も、もちろんシェンヌらしくて良いのですが、
「認められる」ということも力になるのだなあ、と改めて思ったのです。
 そしてその変化は、とても好ましく思えました。
 これからますますの発展を期待してしまいます!





 『なにわコラリアーズ』(大阪府大阪市)
 男声43人?(プログラム上は40人)
 指揮は伊東恵司さん。

 Canticum Sacrum Nipponicum 『Dixit et Magnificat』
 (千原英喜:作曲)
 Ave Maria  -Angelus Domini- (F.Biebl:作曲)

 室内合唱にふさわしいホール、
そして40名を超える男声なのに
決して耳に障らず、
深みのある柔らかい音が素晴らしい!

 5月の演奏会で委嘱初演の千原先生の曲は
緊張感を保ちつつ、様々な表現が実に完成度高く、
説得力ある表現で迫ってくる。

 個人的に、前回聴いた時には
日本民謡的なパートが違和感だったのだが。
 耳が慣れたせいもあるかもしれないが、
オーソドックスな宗教曲的なパートが前述の通り、
本当に見事に演奏されているため、
そんなに『悪目立ち』するほどではなかった気がする。
(…それでも、曲全体の印象として
 やや首を捻ってしまいたくなる私を責めないで欲しい。
 『なにコラ』はこの曲に対し、真から誠実に向かっていたと思う。
 CDにしてもおかしくないほどの完成度)

 盛り上げも知性的、
ユニゾンが柔らかく広がる箇所にも深く感心しました。

 ビーブルの「Ave Maria」
コンクールでもない「コンサート」というこのステージで
さらにこの曲で、このカタい雰囲気?…と疑問もやや湧いたが
トップテナーの独唱も素晴らしく、
見事にはまった和音の美しさ、静謐な美というものが伝わってくる。
 「Amen」がホール全体に輝いた!



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