演奏会感想の部屋

 

 

  Unmarked Singers
  (混声 銀賞・大阪)

 男声4人・女声5人。

 Poulencのクリスマスモテットから3曲。

 少人数なことから、声楽バリバリ的な演奏を予想して・・・
あれ、ノン・ヴィブラートの、
それほど主張するワケでもない声じゃないですか!
 (まあプーランクのこの曲で、声を売られても困るけどさ)

 女声の方は「つや消し」をしている人もいるのかな、とも思いつつ
全体には一般合唱団の方たちが、
とてもよく練習を積んだ、という印象です。

 厳しいことを書くと、
やはり2倍、3倍の人数の方が生きる声、音楽作りなので、
この人数なら、1パートひとりふたり、が生きるような
音楽作りや歌い方を追求して欲しい気もしました。

 …すいませんねー。定番の名曲だし、プーランク好きなもんで…。

 でも、ここまで誠実にこの曲に向かっている演奏には
なかなか出会えませんし、とても好感を持った事は確かです。
 
 あと、女声がみなさん美人!(笑)



  Netherlands Youth Choir
  (オランダユース合唱団)
  (総合2位 女声 オランダ)

 20人。合唱シンポジウムの招待合唱団だそうで。

 ・・・オレはこの団体を聴きに宝塚まで来たのかもしれない(笑)。
 やー、こことか読んで唇を噛んでいたのですが
ホント、聴けて良かった!

 まず最初の印象が・・・「背ぇ、高っ!」(まずヴィジュアルかよ…)
 そういやオランダは格闘技王国でもありましたね。
 黒のタンクトップのパンツスタイル。
 バンダナや胸に飾った花、それぞれがオシャレです。

 おっとヴィジュアルばっかり書いててもしょーがない。
 「Hodie Christus natus est」(グレゴリア聖歌)から
クセのない、優しくのびやかな声が会場に広がり。
 この一声で
 幼少期から同じメソッドの教育を受けているという事で
その声の均質さが納得できます。
 感情の振幅が広い、しかし爽やかな風に吹かれるような気持ちよさ。

 Durufléの名曲「Tota pulchra es Maria」も、
ちょっとしたアクションがあったKodályの
「Turót ëszik a cigány」(ジプシーがチーズを食べる)も
声の柔らかさが旋律への繊細さを生み、
上品なフェミニンさも感じさせます。

 「Tek saulite teçedama」(I.Graubins)は
しみじみとした、胸の奥に染み込む叙情を。
 激しさはないし、空気を切り裂く鋭さも、
力強さも無い声、表現なのに
これほど説得力がある音楽はなかなか無いのでは、と思わせます。

 プロムジカ女声合唱団がやや粗く織った素朴な布地なら
オランダユースは毛の長い上等な毛布の感触。
 肌触りがとにかく柔らかく、目を閉じてしまいたくなる感触です。
 季節で言うなら”春”ですね。
 花曇りの切なさ、薫風の爽やかさを体現しているような合唱団。

 ここから客席で他の団体にはほとんど無かった1曲ずつの、
「演奏後の拍手」が!
 「Tek saulite teçedama」なんて特にパフォーマンスも無かったのに!!
 って私も拍手したんですが。
 ・・・今日の会場のお客さんは、日本にしては反応がビビッド。
 ウケた演奏には大いに拍手を!
 そうでない演奏にはそれなりに・・・。

 ガーシュインの有名曲「I got rhythm」は指揮者無しで。
 それでもピッタリ揃ったアンサンブル。ノリの良さ!
 パフォーマンスも、日本なら全員同じな「振り付け」になってしまうところを
バラバラなもので、それでいて統一感が感じられるセンスあるもの。
 会場も盛り上がって来ます(笑)。

 「Do do kindje van de minne」(R.van Oosten)は
雰囲気を一転させ、オランダの子守唄を。
 ・・・ああ、決して押し付けがましくなく、
前に出ようとしない声と歌なのに、実に伝わる上品な美しさ・・・。
 うっとりと眼をつぶり。
 
 最終曲は「Big spender」(Cy Coleman)。
 この曲も指揮者のWilma Ten Woldeさんは袖に引っ込んじゃって。
 おもむろにメンバー全員、サングラスをかけ…。
 フィンガースナップからささやき、うーん、カックイー音楽!
 そうだね、バーンスタイン「West Side Story」の「Cool」みたいな曲、
と言ったら伝わるでしょうか。
 この曲も会場中、大いにウケにウケ、大拍手!


 たとえば「表現を広げよう」とすると、
力強さ、鋭さ、音圧・・・などをどうしても求めようとしますが、
そういうものが無くても、伝わり、説得力ある音楽は出来る、
・・・というお手本のような演奏でした。

 日本の比較的“声が無い”中学生、高校生の女声合唱団には
大いに演奏作りのヒントになる団体だったと思います。
 もちろん演奏曲のヴァリエーションや洗練されたパフォーマンスで
興味が「持った」という印象もあり、
これが2時間程度の単独演奏会だったらどうかな、という疑問もありましたが
それでも、いつまでも聴いていたい、耳に障らない、春のような音楽と声!

 ステキな合唱団を知る事が出来たなあ、という
思いに満たされたのでした。



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