演奏会感想の部屋

 

 

  創価学会関西男声合唱団
  (男声 銀賞・大阪)



 男声18人。

 スウェーデン民謡にしても、ラトヴィアの曲にしても全てにおいて
 「…よっく練習してるなあ〜〜〜」という印象。

 やや古いタイプの(それが悪いと言うわけではないのですが)
発声、音楽作りで。

 それでも美声の方が多い合唱団、と感心しました。

 最後の「母」という日本語の、母を讃える曲は・・・
詩が、私には凄くすごくカルチャーショックでした。
宗教的な問題に触れるとアレなのですが、
中学の全国大会で片岡輝氏の詩を聴いた時のような。や、それ以上。

 (えぇと、もちろん揶揄しているわけではありません。念のため。
 うー、こういうことを書くのって難しいな・・・。
 …ちょっと、あの詩を文字で読んでみたい気になってしまいました)





  福爾摩合唱団(The Formosa Singers)
  (総合3位  女声・銀賞  男声・金賞  混声・金賞  台湾)



 全部門で出場しているので
(コンクールはこれが初めての出場だとか!)
最初は女声合唱(20人・男声アルト?1人)で。

 音楽と関係ないけど、指揮者のSu Ching-Chun氏は
ストライプ(赤!)のチョッキと言うかベスト着用で・・・
服装のセンスも国によって色々ですね・・・。

 ブレスを強調する以外は同じアジア系だからか、
日本の合唱団とあまり変わらないような印象。
 それでもクセの無いまっすぐでのびやかな声と表現。

 まっすぐゆえに「Osanna」(Henrik Colding-Jorgensen)」は
音楽の追求が今一歩だったし、
松下耕先生の「四月のうた」
「松下先生の曲を耕友会以上に演奏するのは至難の業」
…という持論通り、
どーしてもブリリやさやかなどの演奏を思い出してしまい、
こっちもイマイチ。
(日本語は上手かったですよ。「U」の母音が深いんですね、台湾は)


 続けて男声合唱17人。若いなー。みんな20代前半?
 松下耕先生の「津軽じょんがら節」を。
 さっき、「日本の合唱団とあまり変わらない」と書いたけど
声の明るさと、音楽・表現の温度、熱量は日本人よりも高い感じ。

 声の明るさ、音楽のまっすぐさ、に関わるけど
ドイツも、この台湾の合唱団も、
音楽を照らす光がすごく強い気がするのですよ。
 影を無くすぐらいに強く光を当てる、というか。

 シェンヌに限らず、日本人の合唱団は
比較的やや弱めの光を音楽に当てて、
それゆえ出来る“影”を尊ぶ傾向なのかな、と思った次第です。
 「陰影礼賛」の世界ですな。

 だから技術的には高度なことを過不足無くやっているけど、けど。
 この「じょんがら節」も耕友会「プレイアード」で
“陰影ある”名演を聴いてるんだよー!
 そのせいもあって、
 「上手いんだけど・・・彫が浅いなあ、うーん」という印象。


 ・・・しかしこの合唱団。
 次の台湾の曲から豹変するのです。
 台湾の土俗性と「耕友会以上?の松下先生作品の演奏!」


 「獵人追逐」(台湾ブヌン族民謡/編曲:蔡c女冊)は
そののびやかさと力強さが
台湾の土俗的な民謡にバッチリはまっていて!
 うわ、こりゃ日本合唱にありがちな「微かな憂い」なんていらねーよ。
 ていうかそんなのジャマ!

 リズムや足踏みなど、
 その場の空気を押し広げるようなその力強い声と音楽に、
 「なるほど、“台湾らしさ”とはこういうものか!」
 …と腹の底で納得するものがありました。

 そして混声合唱。(男声14人・女声19人)

 「天烏烏」(台湾北部童謡/編曲:蔡c女冊)は
激しいリズムがイキイキした表現。
 前に迫ってくるような強さ。

 「タンポポ」(曲:陳永淘/編曲:蔡c女冊)も
ちょっとした効果(口の形を変えながらのロングトーン等)が
あったのだけど。
 それが日本合唱の演奏でありがちな“超絶難易度”ではなく、
しっかり技術的にも消化されていて、
その効果の意味というものが伝わる演奏でした。

 やはり台湾の人が歌う“台湾曲”は説得力があります。
 台湾らしさ、とはこの演奏から考えるに
前述のような、強い光の下、世界を広げるような力強い声とリズム、
という感じでしょうか。
 (リズム感そのものはアフリカ系などとは違って、
  どこか日本と共通するような気もしたんですけどねー)

 続けて「オーストラリアの狩りの曲“ですよ!”」(…だったっけ?)
という「Wirindji」(Stephen Leek)は
現代的なケレン味たっぷりのなかなか面白い曲。
 こちらもキッパリ、ハッキリした表現が合っています。

 台湾の曲4曲、そしてオーストラリアの曲も
現代曲によくあるちょっとした効果があったのですが
繰り返しますがそれほど超絶難易度、ではなく。
 しかしその“適度な難易度”ゆえに音楽へ力強さを加えていました。

 日本のコンクールでよく演奏されるような
 「超絶難易度」の部分は、消化できていないこともそうですが、
その部分だけ「音楽とは別物」
…となっているように改めて思ったのですがいかがでしょうか?
 やや平易な部分と難易度が高い部分が離れていなく、
自然に繋がっているような印象を受けました。

 そして最後は
 「狩俣ぬくいちゃ」(『八重山・宮古の三つの島唄』より)

 松下耕先生の、楽しい曲だけれど
速いテンポでの手拍子・足拍子、なかなかの難曲です。
 前2曲の松下先生の曲は「耕友会には勝てないね〜」だったけど…。

 (おっ?!)

 最初の「サササ…」という男声の速く複雑なリズムからなんか
 “ノッてる!”
 ステージ右側のノッポの眼鏡のにーちゃんなんか
私なら目を血走らせなきゃできそうもないのを
実に楽しそうにやってるんだもんな〜〜〜。
 メンバー全員、体の自然な揺れが、
そのリズム感が借り物じゃない事を証明してます。

 そして民謡部分、そののびやかさと言ったら!
 明るい強い声が見事に合っていて、
フォルモサの背景に八重山・宮古の青い海が広がるような!!

 複雑な足拍子、叩いてから円を描く手拍子にも
必死さは感じられず、積極的に音楽の中の表現として
ぐんぐん伝わってきます。

 終わった瞬間大拍手!
 この日の演奏会の中で一番強い拍手が会場に響き。
 退場するフォルモサ・シンガーズの姿が見えなくなるまで
その拍手が続きました。

 や〜。さっすが耕友会のしまこさんが
 「あの曲の演奏は世界最高水準」と太鼓判を押す演奏。

 “耕友会以上の松下先生作品の演奏”

 初めて体験しちゃいました ですよ!(← 司会のマリーさん風)



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