演奏会感想の部屋

 

 
  クール・シェンヌ
  (混声 銀賞・奈良)

  男声13人・女声16人


 今回のシェンヌはとてもとても良かった!
 良いことをたくさん書きたいと思うのだけど
バランスのため(?)その前にちょっとだけ気になったことを…

 1)テナーの高音域が他パートと異質、跳躍後の音が不安定。
 2)音楽が変化する部分のより一層の追及
 3)だが「ヒスイ」はあまりにも遅すぎて
   ぼくはあまりにも悲しかった…
   (遅い事そのものは全くかまわないんですけど
    歌い手がついていけてないのが・・・)

 ・・・すいません、辛口で・・・。


 「Sicut Cervus」(Palestrina)
 最初の音から、前の団体から人数が増えただけとは思えない
音の広がりがあって。
 歌う前から音楽が流れていたような旋律の始まり。

 たとえばリレーでバトンを渡すとき、
次の走者はバトンを渡される前から走ってるじゃないですか。
 そんな感じで各パートに旋律が移っていっても
 “歌っていないのに”
前からそのパートが歌っていたような空気があるんです!

 そして、4パートそれぞれが主張しながらも、
それでいてひとつの合唱団としての塊、
ひとつの“うた”としての力強い説得力を作っている。

上西先生の音楽作りは、あまり音楽の変化は出さず、
「流れ」を重要視するもので、
曲によっては正直に言うと。
 やや飽きてしまうことが無きにしもあらず、だったのですが。

 今回も、それほど変化を付けるわけではない。
 しかし、それなのに、と言うか、いや、それゆえに
“うた”としての説得力が胸にガツンと響くんです。
 上西先生のやりたかったことが、
鈍い私にもようやく分かったような感動がありました。

 もちろん前述のように、変化の幅は少なくとも、さりげなくとも、
技術的にもう少し詰められるのでは、
それによってさらに“うた”に説得力が増すのでは。
 などとも思いましたが「Three Motets」より「1」(Pierre Villette)は
あふれる感情の表出にあたたかな湯に満たされたような気持ちになりましたし、
名曲「The Blue Bird」(Stanford)は
思わず目を閉じたくなるような美しさ、叙情がありました。

 そして、出場した全7団体のうち、
音楽への高い志向を感じさせる、強いベクトルがある、と一番思ったのは
「クール・シェンヌ」でした。

 もう一回書きますが、上西先生の求める音楽を
私は初めて分かったような気がします。
 料理で言うなら。小皿でちょこちょこ何皿も出すのではなく、
ひとつの素材、例えば牛肉なら牛肉のステーキを大きく
「どうだ!」と提供するような。

 もちろん牛肉の側にある野菜、
「付け合せ」をもうちょっと考えたら
もっとその「ひとつの素材」が美味しくいただけるかな、と思いつつ、
それでもこんなに美味く力強い“うた”はなかなか聴けるものではありません。

 今まで聴いたシェンヌの演奏の中で最高に良かったです。震えました!


 

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