演奏会感想の部屋

 

   
 なにコラ第13回演奏会   感想その2



 第3ステージ
 〜アラカルト 「世界を歌い尽くせ!」


 …と題されたステージは世界の様々な歌、全10曲。

 「前日に 『百均で買って来い!』 と指揮者に命令されました」
 その鯉のぼりがメンバーの片手に踊り、
客席後ろから歌いながらの入場。
 後半になって出てくる巨大な鯉のぼりがなかなかの演出。

 このステージ、最初に辛いことを言うと
ちょっとミスの多さ、大きさが目立った。
 演出を含むステージで暗譜も多く、
さらにこれだけの曲数をやるのだから
仕方が無いことなのかもしれないが。
 それにしても私が聴いてきたここ5年の中では
完成度が低い年だったのでは無いだろうか。

 もうひとつ。
 演出を含んでいる、と先に書いたが
その演出、動きが、いつものなにコラステージのように
歌と連動するものではなく、
ほとんど単なる“振り付け”のようになっていたのが残念。

 たとえば「The Singing Apes」の移動の雑然さ。
 右側で2人だけ座っていた意味は?
 そして立ち上がるタイミングと音楽の連動は?
 「Harambee」も移動の意味、
指差し後の音のアタックなどが不明瞭、などなど。

 もちろん、他合唱団の「演出ステージ」での
 「…あれ? なんで冷房、急に効いて??」
 のような、サムさやダレダレの間延び感は無かったが。
 でも、なにコラの求める水準はそんなものではないはず!
 
 ・・・来年に期待しています。

 「ゆけ、我が思いよ金色の翼に乗って」
 (オペラ「ナブッコ」より/G.Verdi)を始めとする
ピアノは植松さやかさん。

 いつものごとく名調子の司会は
高橋早稲田大学出身守さん。

 柔らかいオペラ歌唱の次は
 「Jamaican Market Place/L.Farroe詩・曲」
 (ジャマイカの市場)

 太鼓やタンバリンなどの鳴り物を使い、
移動しながらの軽やかで楽しい曲。

 「The Singing Apes/J.Sandström曲」
「カオヤイの歌う猿」という邦題だそうで。
 いくつものグループを作り、
細かい音符で表す猿の鳴き声がずっと続いていく曲。
 テナーのソリストに応える集団、鳴き声が増えていく・・・など
森の奥から猿の呼び交わす声が聞こえてくるような。

 サンドストレムの曲らしく
重なる音響がとても興味深い曲だが、
そのサウンドでどんな効果を聴く者に与えようとしているのか、
今ひとつ分からなかったのが残念。
 音響効果を上げるなら客席に散らばって演奏しても良かったかな?

 ケルト民謡の「Dulaman(海草)/M.McGlynn曲」
歩きながらの名ソリスト早口歌唱がカッコイイ!
 合唱も、こういう軽やかなリズムの表現はさすがなにコラだなあ、と。

 アフリカ民謡の「Harambee/R.I.Hugh曲」
太鼓のリズムに乗った明るい曲。
 ちょっとラターっぽい?その曲は壮大なクライマックス。

 サイモン&ガーファンクルの歌が懐かしい
イギリス民謡の
「Scaborough Fair/E.toller&M.Tateishi編曲」
ギター伴奏で。
 前半、ギターとアンプの接続が上手く行っていないようだったり、
合唱音程の不安定さもあったが、
ベースのフレーズの柔らかさ。
 トップテナーのファルセット。
 こういうポピュラー系の曲はダサくなる演奏がほとんどなのに
サウンドとして洗練されていること。
 ギターも音の粒の美しさ、と良い演奏だった。

 そしてグルジア民謡の「Naduri」
 司会の方が
 「作曲家:ストラヴィンスキーはグルジアの男声合唱を
  “人類の作った最高の音楽”と絶賛したそうです」との言葉に頷く。
 私も学生時代にそのストラヴィンスキーの言葉に惹かれ、
この曲が入っているグルジア男声合唱のCDを買い、
独特の発声と力強いリズムの説得力に魅了され、
何度も何度も聴いたものでした。
 なつかしーい! 

 合唱は、グルジア合唱の土臭さ、
リズムの表現にちょっと不満はあったものの
後半に畳み掛ける怒涛のクライマックスは心を震わせてくれました。
 この曲の楽譜があったということと、
それを探し出してくれた、ということに驚きました。
 なにコラのみなさん、演奏してくれてありがとう!

 「Dalvi Duoddahl Luohti/S.Paakkunainen曲」
昨年のコンクールでも演奏した「冬山のヨイク」。
 そうそう、この偽?ホーミーが響き渡る中、
テナーの旋律がステージのもっと遠くから聞こえるような・・・。
 そんな音風景の見晴らしの良さ。
 やっぱり演奏し慣れている曲は違うね!

 帽子を渡す相手を探し求める、渡そうとするが伊東さんに断られる、
終わりは別の帽子人(…妖精だそうで)が出てきてデュエット!
 という寸劇もキマっており客席の笑いを誘ってました。
 演奏後に、「ホーミー教室」として、ホーミーパートの実演。そして
 「ではやってみましょう!」
と客席にやらせるのもムリありまくり!!

 「Nigra Sum/P.Casals曲」
 「私の肌は黒い」という題名のこの曲は
なんと名チェリスト:パブロ・カザルスの作曲!
 そのことにも驚くがこれが実に良い曲なのにまた驚く。
 ピアノの伴奏とともに、
柔らかな叙情とロマン、中間部の静寂、
切なさ、優しさ、そして愛情といったものが
時折現れるユニゾンの説得力に支えられ、聴く者へ染みていく。

 興味を持たれた方は「パブロ・カザルス聖歌集」というHPへどうぞ。
 (※開くといきなり大きな音が出ます!)

 楽譜もパナムジカで発売中です。

 いやあ、良い曲を知ることができました!

 最後の曲は
 「Auld Lang Syne(遠いあの日)」
 (R.Burns詩/滋賀男声合唱団編曲・改編)


 「蛍の光」の原曲というこの曲は
持続音からソロ、デュエット、カルテット・・・と
前で歌う人数が増えていき
最後にはステージ前列いっぱいに広がるという演出。

 演奏終わりにrit.してたっぷり歌っては?という気もしましたが
締めくくりにふさわしい選曲。


 アンコールは
 「Ev’ry time I feel the Spirit」(黒人霊歌)

 ゆったりしたテンポで始まったこの曲は
歌いながら1階客席の壁半分の位置まで並び。
 そのフィンガースナップやソリストは
ちょっと微妙な時もあったりしましたが
実に丁寧に歌われていました。
 (アンコールぐらい、爆発しても良いんじゃ〜?)


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