最初の音に涙が滲んだ。
その瞬間だけ、旋律もリズムも解釈も和声の展開もすべて投げ捨て、
ただこの響きだけを気が済むまでずっとずっと聴き続けていたい。と願った。
今回の演奏会も本当に素晴らしい。
2005年2月20日(日)16:30開演。
名古屋:しらかわホール
合唱団MIWO第21回定期演奏会である。
第1ステージは
17世紀のフランス・バロックの作曲家:M.-A.シャルパンティエの
「TE DEUM」「SALVE REGINA」
指揮は大谷研二先生。
ヴィオローネは西澤央子さん。
ポジティブオルガンは能登伊津子さん。
MIWOは女声18人・男声12人。
「TE
DEUM」はソリストと合唱が多様に絡む曲。
MIWOの団内ソリストたちは呆れるぐらい上手い。
コンサート・ミストレス:高橋淳子さんともう一人のソプラノの方はもちろん。
アルト、テノールの各氏も。
演奏はまず、
MIWOの女声がどちらの音が全く分からないほど
ヴィオローネと溶け合うのにはさすがに慣れたが、
今回はさらに歌い方までも「弦の奏法」。
弓を返し、奏でる。…似ている。弦は声。声なのに弦。
弦楽器の歌い方までもMIWOの女声は似てきている。
本当に「声は楽器」という印象。
そしてリズミカルな部分から、優美な旋律へ。
平坦に聞こえがちなこの種の音楽への印象を変える
各ブロックごとの鮮烈な変化。
旋律の軽やかに遊ぶような
大谷先生が語られる
“フランス・バロックのエスプリを出した”雰囲気と収め方。
「SALVE
REGINA」はバス、そしてテナー、アルトの
ソリスト3名を挟むような2重合唱で。
MIWO団員み〜さんのHP掲示板情報によると、
「カウンター・テナーのような声のアルト」のCさん。
「かなりの高音域でも柔らかく実声で出してしまうテナー」のMさん。
こういう方がいるから男声合唱団でトップ・テナーだった人も
MIWOに入団するとセカンド・テナーかバリトンになってしまうそう。
ちなみにアルトのような声のテナーもMIWOには存在して。
時折アルトに混じって歌っていましたが ・ ・ ・ キミは、本当に、
成人しているのかい?(笑)
このような人材がいるため、
テナーがアルトより高い音域を実声で歌ったり、
お互いに助け合っても違和感なく響きが溶け合うのだとか。
み〜さんの言葉
「混声合唱団の音色がまとまって美しく響くためには
隣り合うパートの音色が似ていて、混ざりあう必要があると思う」
を、MIWOは正に実現している合唱団と言えます。
今回はさらにバス、低音の「抜け」がとても良く。
以前より充実した響きを作り出している気が。
ソリストの響きがとても溶け合う。
軽やかなテノール。そのテノールに無理なく重なるしなやかなアルト…。
合唱も持続音が高まり、張り詰め。
純粋で涼やかなソプラノ。豊かに支えるバス。その間をつなぐアルトとテノール。
・・・響きの素晴らしさに陶然となる。
ソリストが雲間から射す一光の“線”とするならば、
合唱はその光の下、広がる海が一斉に輝く“面”。
改めて「合唱」、合わさった声というものは、
こんなにも柔らかく空間を満たし広がる、温かな響きがするのだなあ、と。
そんな感想は、思い返した今、ようやく言葉にできるだけだが。
聴いている瞬間は、ただ滲む視界の中で本当に、
「この音をずっと聴いていたい…!」という想いに満たされていた。
「TE
DEUM」「SALVE
REGINA」とも、
溶け合うもの、明確に違いを浮き立たせるもの。
響きにも、音楽にも、その2つを常に織り交ぜ、聴く者に伝えていく。
一瞬、一瞬が聴き逃せない、そんな音楽と演奏だった。
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