演奏会感想の部屋

 

  コーラスワークショップ in 伊丹  
          《課題曲講習》



 伊丹市にある会場の「いたみ中ホール」はぎっしり。
 開催者側の想像よりはるかに多くの参加者が集まったそうで
全国から集まった数百人の方々が熱心に受講していました。

 松下中央合唱団指揮者の本城正博先生
Vocal Ensemble《EST》指揮者の向井正雄先生による講習。

 混声の課題曲は全4曲だが、それぞれ等分の時間配分ではなく、
G1:1時間弱 G2:20分 G3:30分 G4:20分
 というもの。

 まずG4:公募入選作品である
 「いなくなる」
 作曲:山内雅弘 詩:谷川俊太郎
 本城先生の講習で、
最初に演奏(録音)を聴いてから解説をする、という形式。
 (実際に演奏を聞いて、
  ハーモニー春号の「作曲者自身の解説」をなぞる、
  と考えてもらえればいいのかな?)

 この曲の録音を初めて聞いた私の感想は
 「むずかしーなー、ピアノ!」というもの。
 本城先生が「屈折したショパン」とおっしゃるのも的を得ていて
どこかアンニュイな、ピアノと合唱が、
霧のように中間色的な世界を作っている。
 技術的に難易度が高め?ということと
まっすぐに弾くだけではなく、ショパン的なピアノのニュアンスと
合唱を絡めていくのって、センスを問われるよなあ。

 本城先生
 「調がコロコロ変わる難しさ。
  たとえば何度も出てくる、rit.の後の
  最初の音はタテを揃えてハーモニーを決めたい」

 (11−12小節、など)

 「メロディーを大切に」

 そして何度も出てくるフレーズ末のrit.は
 
 「やりすぎないで、自然にやったほうが良いのでは」

 後は楽譜に演奏記号がよく書かれていることから
 「丁寧に楽譜が書かれているので
  そのとおり演奏すれば
(音楽的に説得力を持つ?)

 最後に作曲者の言葉を引き、
 「抑制された中での深い感情表現」を目指して欲しい。

 向井先生も、この曲のrit.に言及し
 「調が変わる前のrit.をギクシャクさせない」

 やー、rit.のやり方ももちろんそうだけど、
16分音符で歌われる「いつのまにか」や、
合唱の和音の色彩感など、かなりセンスが問われる曲だと思います。
 演奏される方々、がんばってください!



 G2:「The Coolin」(「巻き毛の娘」)
 作曲:Samuel Barber


 ケンブリッジ・ユニバーシティ合唱団の
お洒落で洗練された、とても良い演奏を聴いた後で
本城先生の解説。

 「小節の最後が、次のフレーズの最初にかかるので
  
(エネルギーを?)そこへ持っていく」

 「8分音符の長さは一定ではない。
  言葉に合わせて微妙に変えていく」

 「10小節目からの各声部の掛け合いは
  ハッキリそれぞれの声部が見えるように」


 「14小節目は調がハッキリせず
  音が難しいのでハーモニーをしっかり確認する」


 「18-19小節は印象的な和音を決める。
  ベースの音が重要」

 「22小節目、テナーとベースの“合いの手”の表現。
  ゆらぎを巧く表現するのと同時に
  掛け合いの表現も重要」

 「26小節目のようなホモフォニックな箇所は
  強い“意志を出す”」

 「32小節からはフレーズを長く続かせるか、
  それとも切るか、解釈が分かれるところ」


 まとめとして
 「“ゆらぎ”の中に表情を出す」
 「男声と女声の“絡み”をハッキリ見えるように」
…と。


 向井先生は
 「洗練されたハーモニーが特長の曲。
  
(音楽の)横の線も感情に沿っている。
  非常に壊れやすい内声のハーモニーは正確に」


 この曲は向井先生が以前からずっと憧れていたが
その音楽の素晴らしさゆえに、実際には演奏できなかった
思い入れが深い曲だそうで。
 (その気持ち、わかるなー)

 本城先生も良い曲ということに同感で
 「詩が素敵ですよねえ」

 「本城先生、日本語の訳詩を読んでみてくださいよ!」と向井先生。

 「日本語では読めませんよ(笑)」

 そんなあっつーいラブソングであるこの曲は 
 「Reincarnations」の3曲目なので

 「1、2曲目もぜひ聴いて欲しい。
  3曲全部聴くことで、いろんなことがわかる」
…だそうです。

 この曲、私もとても良い曲だと思いますが
 「指揮者の棒の下で忠実に!」って音楽じゃないような。

 本城先生も「掛け合い」「ゆらぎ」「合いの手」「絡み」
 そんな言葉を使っていたように、
大人数の合唱団でも練習では少人数に分けて、
アイ・コンタクトで歌と同時に想いを交し合う、というのが良いのでは。
 (特に男声と女声はね!)

 日本のアマチュア合唱団だったらぜひとも長野の
 「合唱団まい」の演奏が聴いてみたいですねー。
 (…とか書くと、選んだのはG1だったりするんだなこれがまた)




                              ●課題曲講習 その2へ