演奏会感想の部屋

 


 ◇音楽の樹 〜三善晃合唱講習会(10/11)受講団体による演奏〜

 このステージはすべて三善晃先生の曲。

 「合唱団るふらん」(東京・栗山先生指揮)は
黒い、通称“えっち”ドレス23人で
女声合唱組曲「詩の歌」から
カ,かいだんT,かいがらさん
を立派に演奏。

 「晶」よりも深い声で、言葉よりも“音”を前面に出す印象だったが
これは寺嶋作品と三善作品の違いなのだろうか。



 「うつのみやおとこコーラス粋狂座」(栃木・野本立人先生指揮)は
約19人、石島彰子さんのピアノで

男声合唱のための「五つのルフラン」から
お菓子と娘,カチューシャの唄
茨木のり子詩の「一人は賑やか」


 「カチューシャの唄」でのテノールの流麗な旋律が良かった。

 ・・・「ひとつの合唱団」としての響きが無い団体は
私は印象がどうしても希薄になってしまうかな…。
 「一人は賑やか」が終わると、前の席のおばさまおふたりが
 「良い詩ねえ〜!」とうなずき合っていました。

 こういう、かすかな哀しみ、が流れている詩と曲には
男声合唱という形態はこの上なく合うと思います。
 確かに良い詩であり、良い音楽!
 30代以降が中心の男声合唱団の方、レパにぜひどうぞ!!



 「クールオルタンシア」(東京・藤井宏樹先生指揮)は
約20人、服部真由子さんのピアノで
金子みすずの詩による「五つの詩曲」
年輪を重ねた重厚感ある表現で演奏。



 ひとつ団体をとばして。

 「女声合唱団フィオーリ」&「女声合唱団CELISH」
(島根・森山秀俊先生指揮)は
ふたつの合唱団の合同演奏。約30人ほど。
 松田美紀さんのピアノで。
 女声合唱とピアノのための「三つの夜想」から
 淡いものに,或る死に

 若い声から生まれる、やや硬質な音楽。
 整った美しさを感じさせてくれた。



 とばした団体の感想を最後に。
 ふたたび「合唱団 響」(栗山先生指揮)
 まずは

 宗左近「あなたにあいたくて生まれてきた詩」より
 松本可奈子「なみだ」
 『なみだ』・と


 だかあぽコンサートで歌詞カードを読んで
 「まさかコレぜんぶ歌うわけねえよな・・・」と思ったら
その通り“まさかコレぜんぶ”歌われてドギモを抜かれた曲。

 ・・・再演する栗友会以外の団体を望みます!


 続いて、斎木ユリさんのピアノで。
 ピアノのための無窮連祷による
 「生きる」


 谷川俊太郎氏のこの詩から先に入った私としては、
やはりこの曲は悲しみに満ちすぎていて違和感を感じてしまう。

 谷川氏ご自身の朗読のように
(このページの真ん中よりちょっと下の箇所です)
中程から入る谷川賢作氏のピアノのような音楽が
ふさわしいような・・・。

 しかし、しかし、「作品の力」とは凄いものだ。
 言葉と音に血が通っている。
 歌い手と聴く者の間に見えない太い動脈がつながっているよう。
 「のどがかわく」「木もれ陽がまぶしい」「ふっと或るメロディを思い出す」
 …「生きる」につながる言葉を重ねるたび旋律を重ねるたびに
歌い手の脈動、鼓動が伝わってくる。いや、逆にこちらが伝えているのか?

 栗山氏が音楽をどんなに引っ張っても
食らいつき、決して絶えない音楽の流れ。
 ある「響」団員さんのHP日記を読むと、栗山文昭氏入魂の指揮だったそう。
 それも全くうなずける演奏でした。
 聴いた後に自分の鼓動が感じられるような、そんな演奏。


 繰り返すが、私はこの詩にこの音楽は違和感がある。
 ・・・しかし、この作品自体の説得力は全くゆるぎない。
 これが音楽の力だな、と実感しました。聴けて本当に良かった。



                      『コロ・フェスタ その4』へ続く



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