演奏会感想の部屋

 


 ◇発信の樹   〜各合唱団のレパートリーや新しい合唱作品の紹介〜  


 「男声合唱団FREIE KUNST」(島根・米山辰郎先生指揮)は18人。
しっかりとしたカウンター・テナーで鈴木輝昭先生作曲の
「Feria Sexta 〜聖金曜日のレスポンソリウム〜」を演奏。



 「松本女声アンサンブルAZ」(長野・栗山文昭先生指揮)は
見事なテナー・ソロを加え、「だかあぽコンサート」でも演奏した
高嶋みどり先生作曲の「ぬえ草の女にしあれば…」を演奏。
 ひとつひとつのフレーズをとても丁寧に、
かつ女性らしい“艶っぽさ”が感じられる表現で
古事記の世界を再現。



 「大社で歌おうよ…」(東京・片山みゆき先生指揮)は
片山先生指揮の各合唱団からの女声メンバー9人。
 グレゴリオ聖歌から3曲を運動性あふれる、生命感のある演奏で。



 「女声合唱団 彩」(東京・栗山先生指揮)は
23人で鈴木輝昭先生作曲の
無伴奏女声合唱団のための「相聞歌」から
3曲を演奏。

 耳に決して障らない爽やかな響き、
フレーズへの細心さ・・・と文句の付けようなく上手い!

 芥川龍之介:短詩、委嘱初演のこの曲。
 最近の鈴木輝昭先生の曲は、音楽をどこかに向かわせる、
という推進力や方向性みたいなものはあまり感じられず、
聴くものの周囲にうかび漂う“空気感”のような曲が多い印象があるのだけれど。
 …これは私が聴く曲にたまたまそういうものが重なっているのかな?



 「グリーンウッド・ハーモニー」(石田文生先生指揮)は
仙台から?!…と思ったけど金沢県の同名混声合唱団。
(それでも遠いよね〜)
 寺嶋陸也先生のピアノと12人ほどで
オペラシアターこんにゃく座の「ソング」から
萩京子先生作曲 「暗い柳の木立のかげ」
林光先生作曲 「けっして来ない聖者の日」
家庭的なあたたかい雰囲気で演奏。



 団体をひとつとばして
 「合唱団ボイスフィールド」(兵庫・西牧潤・天野祐介先生指揮)は
男声10人・女声13人で
William Hawley作曲「O Magnum Mysterium」
Marcos LEITE作曲「Tres Cantos Nativos」
Robert CONVERY作曲「At Terezin」を演奏。

 2曲目のアマゾン原住民のメロディーを元にした曲は団員の鳴らす打楽器が楽しく。
 ナチスによって強制収容されたユダヤ人の子どもの詩に作曲された3曲目は
ヴァイオリンとヴィオラとチェロ、そしてピアノを加えた珍しい曲の演奏。



 あ、とばした団体の感想。

 「うつのみやレディスシンガーズ晶<AKIRA>」
 (栃木・栗山文昭先生指揮)

 寺嶋陸也先生作曲の
 「二月から十一月への愛のうた」
 女声合唱とピアノのためのから
 五月のうた
 八月のうた
 九月のうた
 十月のうた
 十一月のうた

 2002年12月、東京:トッパンホールでの演奏会感想を
ちゃんと書かなかったことは未だに私の悔いとして残っている。
 あの日の「二月から十一月」
そして「宮崎駿アニメ作品集」の「君をのせて」で泣いてしまった(!)こと。
 そして休憩中のお菓子と
観客みんなに渡された団員さん手書きのラブレター(?!)。
 それらの想い出は冬の日のストーブのように今も私の心をあたたかくしてくれる。

 まるじゅんさんの感想も、その感動を充分表しているもの。


 16人、東欧の民族衣装のような服装の団員さんが並ぶ。
 作曲者:寺嶋陸也先生ご本人のピアノ。

 明晰な、歌詞カードを全く必要としない発語。
 谷川俊太郎氏の言の葉が演奏者から放たれると、
 聴くものの頭に直に響くような。

 そして、歌われるその詩のイメージの豊潤!
 十月のうた
 「草の間から風が湧いた
  小さな栗がかぶりをふった


 “菜の花を歌う時は心に菜の花を描いて…”

 栗山氏の言葉が甦る。目の前に風が吹き、心が揺れる。

 女声のひとつの旋律に、
寺嶋氏のピアノがそっと置かれる。交わる。からみ合う。
 ふたつの線が重なり、結ばれ、音楽の織物となって広がっていく。


 演奏が終わったあと、深い深いためいきが出た。

 なぜ音圧を高めるのか。
 なぜたくさんの音を重ねるのか。
 なぜ日本語を歌うのか。

 優れた演奏を聴いた後には多くの「なぜ」が頭を駆けめぐる。


 こんなに「つぶやき」のような、しかしこの上もなく雄弁な音楽は、無い。
 まるで私だけに歌われたような印象をもってしまう演奏。
 ひとりの女性と向かい合い、手を取られて
五月から十一月までの季節を巡った、そんな気がした。



                         『コロ・フェスタ その3』へ続く



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