演奏会感想の部屋

 


  クール・シェンヌ第5回演奏会(創立20周年記念) 

                 2003  3/22


  クール・シェンヌは橿原高校のOB合唱団を母体にした合唱団。
  上西一郎氏を創立以来の指揮者としていて、
 宝塚国際室内合唱コンクールや
 全日本合唱コンクールの全国大会にも
 1997年、2002年と出場している。
 (註:この感想は2003年3月に掲示板に載せたものを元にしています。
  クール・シェンヌは2003年も全国大会に出場し、
  一般の部Aグループで金賞・三重県知事賞を受賞しました)

  演奏会は毎年行われる訳ではなく、前回の第4回演奏会は
 2001年の2月。第3回は1998年の12月。
  およそ2年に1回のペース、と言えるだろうか。


  昨年、大津での全国大会、私が初めて聴く団体で
 一番感激し、印象に残った団体はこの
 “クール・シェンヌ”…だった。
  2002年の全国大会一般の部Aグループ感想
 その興奮を書いている。
  この団体の、ほんとうにあたたかく、柔らかい響きの気持ちよさは、
 強く、そして長く記憶に残るものだった。
 
  そんなわけで、倉敷に引っ越して関西も近くなった(そうか?)ので
 思い切って演奏会に行ってみました。
  この日の客演指揮:本山秀毅先生の音楽を今まで聴いていなかった、
 という理由もあったし。


  新大阪から郡山(こおりやま)駅まで向かう。
  途中で「法隆寺」駅を通り過ぎる。なんだここは、奈良県ではないか。
  「郡山」という地名で、名古屋にいる時「カンテムス少年少女合唱団」を
 聴くために関西の「茨城」…いや違った「茨木」まで行った時を思い出す。

  あいにくの雨。
  駅から歩いて15分、ということで京都、木造平屋民家“風”の
 あいだを歩く、あるく。
  うー、こんなところに「やまと郡山城ホール」なんてあるのか。
  大きい通りが全然ないぞ。・・・と思っていたら案の定迷った。
  早く来たのに早く来たのに! HPで地図も確かめたのに!
  電信柱に貼ってあったホールまでの道案内にちゃんと従ったのに!

  開演15分前。あせる。来た道を戻り、通りすがりの人に尋ねる。あった!

  ・・・うぅ。この建物は遠目で見て、
  「あんな白壁、瓦屋根の建物はホールなわけない。んなわけない」…と
 思った建造物ではないか。武道場が隣接している。どんなホールだ?

  と思って中に入ると予想を裏切って。
  ステージは天井が高く、
 木肌の気持ちよさを重視したような、とても良いホール。



  1.イギリス・ルネサンス宗教曲

  Ave Verum Corpus (William Byrd)
  O Sacrum Convivium
  The Lamentation of Jeremiah(Thomas Tallis)

  指揮:上西 一郎先生


  女声の服装は白のブラウス、黒のロング・スカート。
  男声は黒スーツ。
  女声が前列15人、男声が後列12人の並び。
  (この1列ずつの並びは全ステージ同じだった。
   プログラム記載では男声17人)

  最初の音を聴いて
  「あぁ〜、やっぱり、“イイ” なぁ〜〜〜!」
 
  自然、そしてあたたかい響きがステージからあふれだす。
 
  やさしく、耳から伝わり、ほんのり身体全体をあたためるその音は
 宗教曲の表現でありがちな、過剰に自らの裡へこもるものは感じられず。
  しかし表現が気負っている、という印象でもない。
 
  シェンヌ団員の身体の深いところから素直に響き、伝わってくる印象。
  歌い手の「ふところの深さ」という言葉が浮かんできた。
 

  ソプラノの表現力に比べ、他パートの曲への反応がいまひとつ。
  もうすこし「一歩前に出る」ような表現が欲しかった。
  ソプラノのうたに対し、各パートがもっとアンサンブルしていたら。 

  しかし、1曲を通して、ゆるやかな流れがずっと続き。
  その流れの中で、表現のひとつずつを“置く”見事さは
 全パート素晴らしかった!



  2.北欧・東欧の合唱曲

  Onnelliset   (Leevi Madetoja)
  AVE VERM   (Orban Gyorge)
  SANCTA MARIA  (Knut Nystedt)
  De circuitu aeterno   (Petr Eben)

  指揮:上西一郎先生


  3曲目は女声合唱、など選曲に変化があり面白いステージ。
  ただ、コンクールの時も思ったのだが4曲目などは
 いま主流となっている現代曲に必要な、瞬発的な表現が足りず、
 物足りないような。

  場面転換なども、パッと切り替わらず
 テンションも後から徐々に盛り上がっていく印象で鋭さがない。
  すべて優しい、柔らかい表現なのだ。
  (片山みゆき先生指揮の「風の集い」の演奏を思い出した)

  自分たちの歌える『枠』をしっかり決めて、
 その範囲内で充分に演奏しよう、という感じ。
  それはそれで安定感も出るし、魅力の一要素でもあるのだけど…。


  このステージでは、初めて全国大会に出た時の自由曲、という
 1曲目が特に良い印象。
  柔らかなリズムが自然で、向こうの民謡のような抒情に聴き惚れました。

  プログラムでの本山先生の文章を読んで。
  こういう曲とこんなにセンスが良い演奏でコンクールに出たら、
 そりゃ本山先生と大谷研二先生は高い評価をするよなあ、と同感。
  きっと私も「飛び抜けて高い順位」を(自分の中で)つけるだろう!


  
 
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