演奏会感想の部屋

 

 
      リガ室内合唱団「アヴェ・ソル」



  2004年秋、ラトヴィアのリガ室内合唱団「アヴェ・ソル」が日本を訪れました。
 このサイトで書かれているように、
 演奏者ひとりずつ、身体の隅々まで歌う理由が充ち満ちているその演奏は、
多くの人々に感銘を与えたようです。

 さて、ネット上にもこの合唱団に対し多くの感想がありますが、
ここでは知人であるケイコさんのblogから転載させてもらいました。
 端的でそれでいて的確な表現、
頭はちゃんとあるけれどもしっかりと身体で聴いているその感想は、
同時に自身の芸術への高い姿勢を演奏の奥に見せます。

 もうこの感想だけで良い気も充分しますが、
蛇足として私、文吾も一応演奏を聴いたので
「その2」の方へ私の感想も載せておきます。…よかったら読んで下さい。

 「聴いた人は自分の中の何かが変わっちゃうんじゃないか」
 …とは同じく演奏を聴かれた、掲示板に書き込みされた方の言葉。
 それほどこの合唱団の演奏は心に響きました。

 まだ「アヴェ・ソル」を聴いていない方々。
 次回来日することがあれば、是非、『ぜ・ひ』、お聴き下さい。





ビバ・アヴェ・ソル!



今日はバイト終了後所沢へ。
ラトヴィアのリガ室内合唱団アヴェ・ソルの演奏会を聴きに行って来ました。

あのねぇ。いやはや。スゴイ!!
久し振りに自分が求めているものに出会いました。最初から最後まで感動しまくり。
なんというか。空気と色で音楽を訴えるのです。
クオリティの高さは、第一声で鳥肌が立つくらい確かなもので、
ハモっているという感覚すら忘れ、一つの声に聞こえるくらい、
テノールとバスがすっごくよく溶け合っていて、
北欧独特の、ヒョーっと上に抜けるようなソプラノの声は、
倍音のような響きで会場中を包み、
でも、それが全然押し付けがましくないのです。
ヘタすると聞こえなくなるくらいの、淡い空気感のある高音。
でもそれに気付いた瞬間に、そのハーモニーの深さに心がぞわっとしました。
こんなにも宇宙を感じさせる2度クラスターと短三和音は初めて聴きました・・・。

シックスティーンほど迫力もないし、
タリスほど完璧なハモりでもなく、
エストニア・フィルほど深くて厚い音圧もない。
変な言い方をすれば、すごく「薄い」合唱団なのですが、
その薄さ、控えめさが、それぞれの曲の持つ世界を過不足無く表現しているというか、
その曲が要求する「音楽」を、自然に担っているのです。
それは本当に自然で、
ヘンにやらせっぽく見えがちな、民族衣装を着ての民謡ステージも、
実に自然に、楽しく、ラトヴィアの田園風景が目に浮かぶような演奏。
だから、多少上ずろうがバラつこうが全然気にならない。
むしろそれがそのまま良い味を出している。
会場中の皆が笑顔になれる演奏なのです。
何ていうんだろう。「音」によっかかってないんだよなぁ。
その音楽が、音程やリズムやフレーズや発声や和音に関わっている、
ということを忘れさせるような音楽なのです。
作曲家がその音楽で表現しようとした風景、空気、心情を、
そのまま観客が空気で受け取れるというか。
音楽の構成要素が完全に媒体になれているのです。

こんなに素晴らしい合唱は久し振りに聴きました。
なんでメジャーじゃないのか不思議です「アヴェ・ソル」。まじで。
指揮者は親子二人交代でやっていましたが、
父親の指揮の方がダンゼン凄かった。違う合唱団になりました。
父親の方が振った武満徹の「さくら」は、胸を打たれました。
(私は、何かが本当に心の琴線に触れたときはいつも、
右の胸の奥に、何かがキュっと留まるような感覚を覚えます。)
しかしこの合唱団の自然さ。控えめ故の表現力、求心力というか。
クセになりそう。
私の苦手な、某合唱団のように、(笑)
ハモりや発声の精密さをこれ見よがしに押し付ける音楽とは全然違う。
自戒も込め。ゆとりのある、懐の深い音楽をしたいものですわ〜。



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