演奏会感想の部屋

 




     
「第56回全国合唱コンクール高校A その2」


             土佐女子高等学校コーラス部
            岐阜県立岐阜高等学校音楽部
           秋田県立秋田北高等学校音楽部
          埼玉県立川越女子高等学校音楽部
        栃木県立宇都宮中央女子高等学校合唱部
           北海道帯広三条高等学校合唱部
          栃木県立栃木女子高等学校コーラス部
         大阪府立淀川工業高等学校グリークラブ
             杉並学院高等学校合唱部

           勝手に座談会


 文吾     土佐女子高等学校コーラス部です。
        (銀賞・女声32人・F2
         自由曲:西村朗作曲
         無伴奏女声合唱組曲「浮舟」から「浮舟」)

 あ〜る   制服がカワイかったです!

 文吾     イキナリそれかよ!(笑)

 清水     いま、けいりんさんがこの場に降りてきました(笑)。

 あ〜る   音程はかなり良いと思うけど、
         課題曲は小節線がキッチリしすぎていて…。

         この団体に限ったことではないんですが、
         F2は付点音符の意味があまり無いというか。
         どの団体も“跳ねない”んですよ。
         「Redemptoris Mater」を4回繰り返す起承転結が
         生きていない気がしました。

         ・・・もっと自由自在な曲だと思って。

 文吾     なるほど…。
         確かにこの課題曲、どの団体も苦労していたね。

         土佐女子はとても練習している感じで
         抑制された、“楚々”とした繊細な表現が良かったです。
         この自由曲も他団体の演奏と違って
         “かそけきうたごへ”…という印象で(笑)。

 きよさわ  僕はこの団体大好きなんですよ。
         応援してます。がんばって!


 文吾     岐阜県立岐阜高等学校音楽部です。
        (金賞・混声32人・G1
         自由曲:千原英喜作曲
         混声合唱のための5つの聖母賛歌
         「マリア・オリエンタリス」から
         「前奏曲:受胎告知」「サルヴェ・レジーナ」)

         この団体は福岡県教育長賞も受賞しています。

 あ〜る   すごく良かった!

 文吾     ・・・良かったのは認めるけど、
         男声、特にテノールが吠え気味じゃなかった?
         ちょっとAグループにはふさわしくないような…。

 ながいけ  うん。課題曲は
        (シュッツ作曲:Quoniam ad te clamabo)
         声が太く、様式も違う気がしたんですよ。

 あ〜る   いや、“押し出し”ているわけじゃなかったから
         ぼくはあんまり気にならなかったんだけどな。
         声は大きめだったけど。

 文吾     表現意欲は満点の演奏だったけどね。

 あ〜る   自由曲の組み合わせが素晴らしかったです!

 清水     私は全体に茫洋とした感じがして。
         もう少し音楽にシャープさが欲しかった、と。

 文吾     そう、ちょっと“音響現象”だけで終わってしまったかな。

 あ〜る   え?! ぼくはひとつのパッケージとして
         音楽そのものを素直に聴くことが出来ましたけどねえ。
         そんなに細かい部分は気にならず、
         音楽の魅力だけが伝わってきました。

 競り人   ・・・あのね、この自由曲を初演した
         大分の「ウィステリア・コール」の団員さんが
         この団体を聴いた後で言っていたんだけど。

 文吾     はい。

 競り人   
「…ウチより上手かった…」 だって!

 一同    (笑)


 文吾     秋田県立秋田北高等学校音楽部です。
        (銀賞・女声29人・F3
         自由曲:カイ・エリック・グスタフソン作曲
         「Tre Andlinga sanger」から
         「Ave Maria」「O salutaris」「Agnus Dei」)


         あ〜、私はここがAでイチバン好きです!

 あ〜る   ぼくにはちょっとストイック過ぎましたね…。

 文吾     え?! でも「東北の女声」って感じで、
         ストイックな中にも奥深い表現が無かった?

 あ〜る   うーん、まだ “引っ込み思案” な気が。

 きよさわ  ピアノとのバランスをもう少し考えると
         もっと言葉が出てきたんじゃないでしょうか?

 ながいけ  課題曲は(萩原英彦作曲:枯れ草の春は)
         「春が来るぞ」
         …という喜びが底にある曲なのに、
         暗い冬のままで終わってしまった気がするんですよ。

 文吾     あ〜・・・。
         だけどこの課題曲で「初めて音楽を聴いた!」
         って気になったんだけどなあ・・・。

 
わかち   …今日初めての日本語課題曲、
(川越女子OG) ということもあったけど
          私も良かったと思いますよ。

 文吾     わかちさん、前からキミはいいコだと思ってたんだ(笑)。

 あ〜る   初対面でしょ(笑)。

 文吾    (笑)。
         まあ、自由曲はそんなに面白い曲・演奏ではなかったけど。

 あ〜る   でも2曲目は良かったですよ。

 ながいけ  課題曲の話に戻りますが、解釈はどうあれ
         “自分たちの世界”をよく表現しているな、
         とは思いました。
         

 文吾     埼玉県立川越女子高等学校音楽部です。
        (銀賞・女声32人・F2
         自由曲:ヤーニス・ウォゾリンシュ作曲
         「Ievina」
         ペーテリス・プラキディス作曲
         「Mistat Linus, Mistitaji」)


         えー。この場には川越女子のOGさんが
         ふたりいらっしゃいまして・・・。
         感想を言いにくいな。飛ばそうか(笑)。

 わかち
 
なっつ    そんな! 言ってください!!
(川越女子OG)

 文吾     じゃあ、遠慮無く(笑)。
         やや音楽がもったり、かな〜と。
         旋律もぶつ切れが多かった気が。

 ながいけ  関係者がいるのになんだけど(笑)
         音楽にインパクトが無かったような。

 あ〜る   ちょっと棒が独特で、
         視線の置き場に戸惑う(笑)とこが。
         全体に大きく振りすぎていて…。

         …昨年の川越女子、ぼくスゴイ褒めていたんだよね。
         先生、変わったんだっけ?

 わかち    いえ、同じ先生です。
         ・・・あの、昨年は私となっつを含め
         3年生が3人しか残ってなくて。
         それで帰る電車が3人一緒で、いつも部活の話をしてて。

 あ〜る   お〜。青春だね!

 なっつ    先生の解釈がヘンだな、と思うと3人で
         「違うよね〜!」って話し合って。

 一同    (笑)

 わかち   休憩時間になると
        
「先生! お時間よろしいでしょうかッ?!」

 一同    (爆笑)

 わかち    合唱を始めて、まだ3年目の先生なので。
         以前はピアノをやってたんです。
         でも、すごい合唱を勉強してくれたんですよ!

 あ〜る   それって生徒に勉強させられたんじゃ…(笑)。

 文吾     自由曲1曲目は拍節感と少しの切なさ、が
         出ていて良かった。
         全体に抑制された、整った美しさだね。

 あ〜る   ぼくは昨年も、シンプルさと、
         繊細かつ自由な音楽に好感を持ったんですが、
         今年は美点はそのままに
         声の通りや音楽の安定感が増して、
         とてもいいと思いましたよ。


 文吾      栃木県立宇都宮中央女子高等学校合唱部です。
        (金賞・女声32人・F1
         自由曲:エルンスト・クルシェネク作曲
         「In paradisum」
         「2 Choruses on Jacobean Poems」から
         「This Life, which Seems So Fair」
         「Even Such is Time」)

 あ〜る   ムチャクチャ良かったです!

 文吾     うん、すごく良かった。とても響く声で。

 あべけん  関東大会も僕は聴いていたんですけど。
         やっぱり上手かったですね。

 あ〜る   ただ、去年も思ったんですけど。
         やっぱり音色が変わればな、と。

         クリスタルに表現を決めているんだけど
         課題曲も自由曲も同じ、
         …どの曲も同じに聞こえる、というのがあります。

 文吾    あ〜。ちょっと違うかもしれないけれど
        全体にやや歌いすぎなところがあって。
        それも単色な表現につながる原因なのかな。

        表現のひとつひとつは練られていて良い印象です。

 ながいけ  ソプラノの表現が同じ印象で。
         声を止めないで前に出すようにすれば
         印象が変わったんじゃないかと思います。

 きよさわ  自由曲の英語の発音が良かったですね。

 一同     同意。


 文吾     北海道帯広三条高等学校合唱部です。
        (金賞・女声32人・F3
         自由曲:鈴木輝昭作曲
         「女に」から「こぶし」「なめる」)


 ながいけ  言葉がとても分かりました!

 あ〜る   ああ、とても伝わりましたね。
         …それが言葉のイメージにまで
         掘り下げてくれれば、と。

 ながいけ  ただ課題曲は1フレーズが一回一回
         “止まってしまう”のが気になって…。

 きよさわ  自由曲は正統的な音楽の作り方だったと思います。

 文吾     私には声がやや幼い感じがしたけど。
         それゆえ純粋でケレン味のない
         まっすぐで素直な表現でしたね。

         北海道代表・高校の部で初の金賞、
         おめでとうございます。


         栃木県立栃木女子高等学校コーラス部です。
        (金賞・女声32人・F4
         自由曲:鈴木輝昭作曲
         女声合唱とピアノのための「肖像画・絵師よ」から
         「絵師よ」)

        文部科学大臣奨励賞も受賞しました。

        良かったんじゃないですか?
        
 ながいけ  課題曲(三善晃作曲:あげます)は
         確かに良かったですね。

         ただ自由曲は音楽が動いていない気がして…。
         言葉も分かりにくかった。

 文吾     やっぱり表現が単色なのかな・・・。
         でも深みのある、練られた声で、
         発語は分かりにくかったにせよ
         言葉へのイメージは優れていたと思います。

         深刻な表現が得意な合唱団ですね。


        大阪府立淀川工業高等学校グリークラブです。
       (金賞・男声27人・M4
        自由曲:三善晃作曲
        男声合唱とピアノのための「縄文土偶」から「王子」)

         福岡県知事賞も受賞しました。

         貴重な男声合唱団の金賞ですね!

 清水     私も男声合唱でトップテナーをしているので
         どうしても厳しく見てしまうのですが。
         …トップがねぇー・・・。

 文吾     ああ、ちょっとノドにひっかかって・・・。

 清水     「“泣かせる”テナー」ではなくやや
         「“泣いてる”テナー」だったかな、と(笑)。

 文吾     え、えぇと(笑)。
         でもバリトンは良かったんじゃないですか?
         旋律をちゃんと歌えて、とても良かった。

 きよさわ   バス・バリトンは良かったですね。

 文吾     課題曲(多田武彦作曲:水路)
         音楽の組み立てもよく考えられていて。
         何回も出てくる「ほうっ ほうっ…」も
         場所によって歌い方を変える、とか。

 あべけん  やはり言葉がとてもよく分かりますね。

 文吾     そうだねー。
         ・・・自由曲も非常によく練習されているけど
         ちょっと「高嶋昌二先生の歌マネ」のような。
         この詩と音楽の世界に、
         生徒が共感しているのかな、と少し思ったな。

 ながいけ  わたしは高嶋先生のファンなので(笑)。

         こういう合唱団が存在して、
         全国大会に出場するということが
         日本の高校合唱界の幅広さを示すものだと思いますよ。

 文吾    それはその通りですね。

 清水     最初に厳しいことを言ったけど、
         合唱を続けていけばあのテナーも
         絶対!!素晴らしいテナーになれると思うし、
         もっと色々な世界が広がると思うんですよ。

 ながいけ  これからも頑張って欲しいです!


 文吾     さて、高校Aグループ最後の団体。

         杉並学院高等学校合唱部です。
        (銅賞・女声32人・F1
         自由曲:松下耕作曲
         女声合唱のための組曲「ふくろうめがね」から
         「花色カメレオン」「トラのようふく」)


 まぐろ。   制服がカワイかったですね。さすが東京だ!…と。

 文吾     昼休みからずっと言ってるよね(笑)。

 あ〜る   ぼくもここはとても良かったです。

 文吾     ああ、制服が・・・。

 あ〜る   そうじゃなくて!(笑)
         音楽がとても良かったですよ。
         銅賞は意外でしたね。

 文吾     実は私も意外だった。かなり印象が良かったね。

 あべけん  僕も本当に意外で。
         聴いた後「金賞だなぁ、これは!」と思って。
         …審査発表の後、後ろの席の杉並学院のみなさんを
         見ることができませんでした・・・。
        
 文吾     ただ、高音域がツラかったかな〜。
         自由曲の器楽的なリズム感は素晴らしかった。

 あ〜る   すごく良かったですよね!
         あのリズムさばきは日本の高校合唱団で
         右に出るものはいないんじゃないかと。

 文吾     声も表情も明るかったし!

 ながいけ  聴いていて楽しかったですよ。

 あべけん  自由曲が杉並の声にすごく合ってましたよね!

 あ〜る   うん。とてもとても良かったです。



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