合唱団訪問記

第28話

 

Brilliant Harmonyの練習とは?!


「合唱団訪問記」

 『Brilliant Harmony訪問記』

その1



 2002年5月7日、演奏会直前の火曜日。
 4日後の土曜日が演奏会!
 (VOX GAUDIOSAさんと言い、
  いつもながら直前の練習見学、いーのかなー。
  …って、ありがとうございます!

 早くも梅雨を思わせる雨の中、演奏会会場でもある
埼玉は川口リリアの練習室に向かう。

 <19:05>

 おそるおそる扉を開けると、天井が高い、
吸音材を使った音楽スタジオのような練習室。

 ピアノを間に挟み、並んだ女性たちと松下耕先生!

 練習室はキレイな板張り。
 土足で入っても良いか、ためらっていると。

 松下先生「ここ、“男子禁制”なんですーぅ」

 ・・・えーと、松下先生は??

 松下先生「ワタシ、 “女” なんですぅ〜〜♪」


 ・・・ノリノリだ。

 1列に並んだ女声のみなさんは、ひとりずつ譜面台を前にしている。
 (練習開始時で21人。すぐに2人参加する。20代前半の女性が多い印象)

 松下先生は白いTシャツ姿。ギャグを飛ばしながら動き回っている。
 相変わらずお若いなー。
 合唱指揮者の中でも、かーなりハード・スケジュールを
こなしているはずなのに…。

 と、団長のうなぎさんに(えぇ、耕友会では有名な方ですね)

 「(松下先生って)元気ですね・・・
 と耳打ちすると。
 いえいえ、と手を振り
 「昨日が久しぶりのお休みだったんですよー」と教えてくれる。

 …そうだよなぁ。
 さすがにタフな松下先生でも、休みがたまには無いとねえ。

 発声練習は松下先生がピアノを弾きながら先導する形。

 決められた旋律を練習している中に(その旋律もなかなか音楽的)
松下先生のハンドサインや、純正調の指示が飛ぶ。


 <19:20>

 さぁ、楽曲の練習!

 最初の曲は松下先生作曲の「よしなしうた」より「かえる」
 谷川俊太郎氏のブラックなユーモア、合唱の擬音が効果を上げる。

 いつも思うのだけど、Brilliant Harmonyの声、というのは
 「しっかりしているけど、素直」…だと思う。
 存在感を増すために余分な事をしていない、と言うか。

 至らない、足りない部分が僅かにあったとしても、
すべて『自分たちの声』と認め
ヘンに小細工をしないでそのまま歌にしている気がする。
(それはVOX GAUDIOSAさんの練習で松下先生が仰った

 「上手くやってるように見せよう。
  キレイに見せよう。
  …というのは自分のための歌だよ。

  他の人のために!
  ・・・という歌ではないね」


 をちゃんと理解し、実行している印象) 
  

 リズム感あふれる旋律が流れると、松下先生、途中で止めて。

 「跳ねすぎ! ここはもっと“哀愁を帯びて”欲しいんだよ。
  ♪ターラララララ(実際にリズムで歌って)」

 「前に16分休符があるでしょ? 軽いでしょ?
  その分、『こーとを』…と重くなるんだよ」

 指導も実際に歌うことを織り交ぜ、同じ言い方をせず、
しかも指示そのものがリズムに乗っている印象。
(特に、歌の“止め”と“再開”がとても上手でさりげないので
 流れがダレない。時間のロスももちろん少ない!)

 と思ったらいきなり松下先生、指示と全く脈絡無く
 「でもオタマジャクシはブラックバスやブルーギルに喰われるんだよね!」



 ブリリのみなさん。


 「わかんねー!」


 楽曲、背景の説明なのか、なんなのか?!
 指示とギャグが目まぐるしく変わり、ブリリのみなさんの
松下先生へのツッコミが、さらに流れを加速させるー。


 練習中、演奏に
 「『これから(蛇に)喰われる!』って箇所なのに(歌に)何も無い、
 “日常”だね」
と言うことで松下先生。

 「『何か言いなさい!』だったら何も言えなくて、
  『“コレ”を言いなさい!』と言われて、はじめて言える。
  日本人、いや、合唱団…みたいなんだよな」と、苦笑い。


 「大学生とかほとんどそうなんだよ。『フォルテ!』…と言うと
  『はいーッ!』とフォルテにして!

  『ピアノ!』…と言うと『はいーッ!』とすぐピアノ!(笑)。

 返事はすごくイイんだけど、で
 『どっちにする?どっちがいい?』 ・ ・ ・  しーん

 これは私も面白い話でした(笑)。

 松下先生「それじゃイカン、というお話ですね!」。うむうむ。


 <19:36>

 Poulencの「Ave verum corpus」。
 この演奏会は全29曲(!)演奏、ということで
目的の楽譜を探すのも大変!!
 (楽譜を探している間、「Ave verum corpus」の旋律を
  ロマン派的にピアノで弾く松下先生♪)

 松下先生全29曲!
        お客さん、途中で帰らないようにしないとな!」

 団員さん「ホントだよねー」

 松下先生「最初にさぁ、お客さんと
       『ビンゴゲーム』かなにか・・・」

 団員さん大ウケ(笑)。

 松下先生「ビンゴ大会をやるから終わりまで待っててくださいね!…とか」

 どんな演奏会だっ!!

 そんな盛り上がり(?)も松下先生が音取りの1音を出すと
今までの雰囲気をみじんも感じさせない、透明な声が出てくる。
(この切り替えの早さと集中力はサスガ!…と思ったなあ)

 1曲を通し、(指揮はもちろん本気!)

 プーランクは新古典派、という説明から
「拍子のリズムをイキイキとさせるには
 アウフタクトもイキイキとさせなきゃ」

 そして松下先生
 「アルトが入ってくるのはピアニッシモでも、
  “語り”は2倍、3倍でね!」


 そして「Co“r”pus」「Ch“ri”stus」の『 』の発語も
リズムの中でするように、と。

 発音、音程、発声、リズム(拍節感)、楽曲に対するイメージ、テンポ感。
 
・・・等々。

 改めて松下先生の指導を目の当たりにすると、演奏とは
いかに多くのものから成り立っているのか、と考えてしまう。

 そしてそれを短い時間で、歌い手をノセながら、さりげなく
多くのものを団員に身につけさせてしまう凄さ。

 この曲の終わりに松下先生が言われた

 「もちろんこれは宗教曲なんだけど。
  プーランクの『ニヒル』な感じ。
  そういうのが出ればいいな、と思います」

 ・・・という言葉が印象的でした。





 (その2へつづく)



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  文吾