「合唱団訪問記」
『Brilliant Harmony訪問記』
その1
2002年5月7日、演奏会直前の火曜日。
4日後の土曜日が演奏会!
(VOX GAUDIOSAさんと言い、
いつもながら直前の練習見学、いーのかなー。
…って、ありがとうございます!)
早くも梅雨を思わせる雨の中、演奏会会場でもある
埼玉は川口リリアの練習室に向かう。
<19:05>
おそるおそる扉を開けると、天井が高い、
吸音材を使った音楽スタジオのような練習室。
ピアノを間に挟み、並んだ女性たちと松下耕先生!
練習室はキレイな板張り。
土足で入っても良いか、ためらっていると。
松下先生「ここ、“男子禁制”なんですーぅ」
・・・えーと、松下先生は??
松下先生「ワタシ、 “女”
なんですぅ〜〜♪」
・・・ノリノリだ。
1列に並んだ女声のみなさんは、ひとりずつ譜面台を前にしている。
(練習開始時で21人。すぐに2人参加する。20代前半の女性が多い印象)
松下先生は白いTシャツ姿。ギャグを飛ばしながら動き回っている。
相変わらずお若いなー。
合唱指揮者の中でも、かーなりハード・スケジュールを
こなしているはずなのに…。
と、団長のうなぎさんに(えぇ、耕友会では有名な方ですね)
「(松下先生って)元気ですね・・・」
と耳打ちすると。
いえいえ、と手を振り
「昨日が久しぶりのお休みだったんですよー」と教えてくれる。
…そうだよなぁ。
さすがにタフな松下先生でも、休みがたまには無いとねえ。
発声練習は松下先生がピアノを弾きながら先導する形。
決められた旋律を練習している中に(その旋律もなかなか音楽的)
松下先生のハンドサインや、純正調の指示が飛ぶ。
<19:20>
さぁ、楽曲の練習!
最初の曲は松下先生作曲の「よしなしうた」より「かえる」。
谷川俊太郎氏のブラックなユーモア、合唱の擬音が効果を上げる。
いつも思うのだけど、Brilliant Harmonyの声、というのは
「しっかりしているけど、素直」…だと思う。
存在感を増すために余分な事をしていない、と言うか。
至らない、足りない部分が僅かにあったとしても、
すべて『自分たちの声』と認め
ヘンに小細工をしないでそのまま歌にしている気がする。
(それはVOX GAUDIOSAさんの練習で松下先生が仰った
「上手くやってるように見せよう。
キレイに見せよう。
…というのは自分のための歌だよ。
他の人のために!
・・・という歌ではないね」
をちゃんと理解し、実行している印象)
リズム感あふれる旋律が流れると、松下先生、途中で止めて。
「跳ねすぎ! ここはもっと“哀愁を帯びて”欲しいんだよ。
♪ターラララララ(実際にリズムで歌って)」
「前に16分休符があるでしょ? 軽いでしょ?
その分、『こーとを』…と重くなるんだよ」
指導も実際に歌うことを織り交ぜ、同じ言い方をせず、
しかも指示そのものがリズムに乗っている印象。
(特に、歌の“止め”と“再開”がとても上手でさりげないので
流れがダレない。時間のロスももちろん少ない!)
と思ったらいきなり松下先生、指示と全く脈絡無く
「でもオタマジャクシはブラックバスやブルーギルに喰われるんだよね!」
ブリリのみなさん。
「わかんねー!」
楽曲、背景の説明なのか、なんなのか?!
指示とギャグが目まぐるしく変わり、ブリリのみなさんの
松下先生へのツッコミが、さらに流れを加速させるー。
練習中、演奏に
「『これから(蛇に)喰われる!』って箇所なのに(歌に)何も無い、
“日常”だね」
と言うことで松下先生。
「『何か言いなさい!』だったら何も言えなくて、
『“コレ”を言いなさい!』と言われて、はじめて言える。
日本人、いや、合唱団…みたいなんだよな」と、苦笑い。
「大学生とかほとんどそうなんだよ。『フォルテ!』…と言うと
『はいーッ!』とフォルテにして!
『ピアノ!』…と言うと『はいーッ!』とすぐピアノ!(笑)。
返事はすごくイイんだけど、で
『どっちにする?どっちがいい?』 ・ ・ ・ しーん」
これは私も面白い話でした(笑)。
松下先生「それじゃイカン、というお話ですね!」。うむうむ。
<19:36>
Poulencの「Ave verum corpus」。
この演奏会は全29曲(!)演奏、ということで
目的の楽譜を探すのも大変!!
(楽譜を探している間、「Ave verum corpus」の旋律を
ロマン派的にピアノで弾く松下先生♪)
松下先生「全29曲!
お客さん、途中で帰らないようにしないとな!」
団員さん「ホントだよねー」
松下先生「最初にさぁ、お客さんと
『ビンゴゲーム』かなにか・・・」
団員さん大ウケ(笑)。
松下先生「ビンゴ大会をやるから終わりまで待っててくださいね!…とか」
どんな演奏会だっ!!
そんな盛り上がり(?)も松下先生が音取りの1音を出すと
今までの雰囲気をみじんも感じさせない、透明な声が出てくる。
(この切り替えの早さと集中力はサスガ!…と思ったなあ)
1曲を通し、(指揮はもちろん本気!)
プーランクは新古典派、という説明から
「拍子のリズムをイキイキとさせるには
アウフタクトもイキイキとさせなきゃ」
そして松下先生
「アルトが入ってくるのはピアニッシモでも、
“語り”は2倍、3倍でね!」
そして「Co“r”pus」「Ch“ri”stus」の『 r 』の発語も
リズムの中でするように、と。
発音、音程、発声、リズム(拍節感)、楽曲に対するイメージ、テンポ感。
・・・等々。
改めて松下先生の指導を目の当たりにすると、演奏とは
いかに多くのものから成り立っているのか、と考えてしまう。
そしてそれを短い時間で、歌い手をノセながら、さりげなく
多くのものを団員に身につけさせてしまう凄さ。
この曲の終わりに松下先生が言われた
「もちろんこれは宗教曲なんだけど。
プーランクの『ニヒル』な感じ。
そういうのが出ればいいな、と思います」
・・・という言葉が印象的でした。
(その2へつづく)
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