演奏会感想の部屋

 

        全国大会あれこれ
 
 
 大学、職場、一般の部の全国大会は2003年11月22、23日
三重県津市の三重県文化会館大ホールにて行われました。
 
 例によって、会場内外で私が見聞きした「あれこれ」をいくつか・・・。


 ●「大・三重物産展」

 会場である津の「三重県総合文化センター」近くには
飲食店もコンビニもまばらにしかないせいか、敷地内に
 大「三重物産展」(?)が開かれて。

 さっそく「伊勢うどん」(350円)に並びます。
 ぶっとい太さのうどんに甘辛のたまり醤油が底に沈むモノは
讃岐系のうどんに慣れた私には「?!」の味。
 やー、まあ・・・、フシギなお味でした。
 名古屋の味噌煮込み、きしめん、あんかけスパといい
中部には不思議な麺料理があるなあ〜。

 他にもTVチャンピオン優勝者が作った
「サンドイッチ」(350円)が美味かった!
 うーん、これは「地ビール」(500円)が必要かな?!

 さらにふつか酔いの胃にやさしい、
大きなハマグリとアオサが入った味噌汁(250円)とか、
ういろう、赤福、天然牡蠣など土産もいっぱい!

 風は冷たいものの、冬の陽にぽかぽかとあたりながら
敷地に腰を下ろして外で食べたのでした。楽しかった(笑)。


 2004年は松山です!
 えーと大「愛媛物産展」がもしも開かれるなら並ぶものは
 「ポンジュース」? 他はなんだろう??


 ●「勝手にプロフィール大賞

 プログラムを見ると、各団体趣向を凝らしたプロフィールが並んでいます。
 昨年は長野の「合唱団まい」が良かったな〜。
 さあ、今年の栄えある(?)「プロフィール大賞」はっ?!

 じゃじゃん!
 島根県 「ゾリステン・アンサンブル」!

 リズムの良さとオチが随所にある楽しさ。(一皮むけました、って 笑)
 そして全国大会に出場できた喜びがあふれる好プロフィール。
 少人数とは言え、団員の名前を全て書く、というのは
今まで無かったのでは?

 演奏は銅賞でしたが、6年も県大会に留まっていたのが
信じられないほどの表現意欲あふれる、鳴る声でした!

 「ゾリステン・アンサンブル」のみなさん、おめでとうございます。
 ちなみに副賞はなにもございません(笑)。

-------------------------------------------------------------
 
  一般A−11 ゾリステン・アンサンブル(島根県)
  
  今年の10大トピックス。いろんなことが起きるのは、ゾリの熱さ
 の証です。今年はゾリにとって忘れられない年になったね。
  @新団員9人ぐらい入って、一気に6割増!常に団員募集中。A
 3年連続での演奏会(写真)。Bさわやかセブン、でも9人組。C
 ゾリHP騒動、そして盛況。D子どもが3人生まれました。E再就職
 達成!一皮むけました。F女声衣装も一皮むけました。G団長邸を
 新築。ローン背負う。H6年ぶり県大会突破に大歓喜!Iそしてさ
 らに今日のステージへ進むことに。ホント愛してるわ!
  ステージ:西福田増木乃木重栖三崎青木美青木貴武石宮本山口小
 川佐藤林由林佳光田谷口植田杉原柳楽川上山内内藤三原羽木進

-------------------------------------------------------------


 ●「大好きです!!」

 会場で知人の女性が言いました。

 「…なんかさあ、枝幸ジュニアが出てきたり、
  演奏終わって席に戻ったりすると、
  周りのオジサンたちが騒ぐんだよねえ、ざわざわっと!」

 ご、ごほん。
 まあいいじゃない、見てると一生懸命なんだよ、“ケナゲ”なんだよ〜。
 このプロフィールも見てよ、ホラ。
-------------------------------------------------------------

 一般B−13 枝幸ジュニア合唱団(北海道)
 
  今年4月、私たちの第二の母は遠く岩見沢市に転勤となり、枝幸
 中合唱部とともに大きな不安を抱える日々が始まりました。月1回
 の先生の指導日を目標に、すべて自分たちで練習をしてきました。
 夏休みは早朝アルバイト等をし、枝幸中合唱部遠征や岩見沢に行き、
 パワーをつけました。私たちにはいつも応援してくれる父母会や見
 守ってくれる町の方々がいます。今日この舞台に立てることも含め、
 すばらしい“時”を過ごせることに感謝し、これからもがんばります。
 人口7,000人の枝幸だからできたこと、枝幸中卒業生の先生に出会
 えたこと、千歳空港まで7時間かかるけれど、私たちは町が好きです。
 昨年とは一味違う成長した私たちをごらんください。

---------------------------------------------------------------

 ・・・なんだか「じーん」としちゃうプロフィールですよね。 え、しない?

 さて、「成長した」枝幸ジュニアは今年も見事金賞を取ったのですが
その表彰式でのエピソード。

 金賞受賞団体は団員2人が指揮者の先生と壇上に並び、
客席に向かって賞状とメダルを見せるのが常ですよね。
 枝幸ジュニアの藤岡先生と団員さん2人も並びます。
 職場や一般団体は、客席から「バンザーイ!」とか言うのですが。
 枝幸ジュニアは壇上に向かい声を揃えて

 「ありがとうございました!」

 うんうん、これは去年と同じ。グッドマナー!と思ったら言った後すぐに

 「藤岡先生、大好きです!!」…と。

 えっ、と驚く藤岡先生。そして一瞬後に目が潤み、手を瞼のほうへ・・・・

 その姿を見ながら、見ている自分の目も、つい潤んでしまいました。
 
 ちなみに北海道ローカルで
枝幸ジュニアのドキュメンタリーが放送されたのですが。
(ガリッと氏による感想ページ)
 私も実家からビデオテープを送ってもらい、観ることが出来ました。
 ビデオを観ながら、この日の全国大会の光景を思い出して。
 遠く離れていても、繋がっている絆、そして愛情、というものに
思いを馳せてしまう情景だったと思います。 

 ・・・生徒に慕われる先生って、羨ましいですねえ・・・。 
 
 
 ●「合唱だんだん?!」
 
 22日土曜日、一日目の大学部門Bグループ。
 プログラムを開くと静大、こまくさ、北大、金沢、愛媛、
…と見慣れた団体の後にこんな名前が。
 
 「大学合唱団 々」
 
 えーっと、なんて読むんだ?
 だいがくがっしょうだんだん??
 
 関西支部代表の兵庫県、43人の混声合唱団。
 プロフィールを読むと
 “兵庫県の大学生を中心にコンクールに出たいメンバーを
  募って昨年結成した「寄せ集め合唱団」”だそうだ。
 ちなみに読み方は
 「がっしょうだんだん」ではなく「合唱団 ノマ」…と読むそうな。
 
 ふーん、最近はヘンな名前の合唱団が多いね〜。
 ・・・と「間違って入り込んだお客様」を見る態度でいたら
課題曲の「水汲み」からビックリした! すぐに姿勢を正した!
 
 素直な表現意欲から出る音楽がとても心地良い。
 「水汲み」は流れが止まるようで止まらないオモシロイ解釈。
 自由曲、トルミスの「秋の風景」がこれまたスバラシイ。
 それぞれの表現が的確で、色彩感も抜群。音響も良く練られていて。
 
 「音楽は化学変化!」…との言葉を借りると
リズム、メロディ、ハーモニー、そして言葉、
それぞれが影響し合い、結晶していく。
 この「々」の演奏は見事に化学変化を起こしている。
 なにより会場の空気を一瞬で変え、聴くものを一点に集中させてしまう
指揮者の力量が見事!
 
 おやびんさん情報(感謝です!)によると
この指揮者は神戸大学混声合唱団エルデの出身で
今、大学院の学生さんだそう。
 この日もなにコラ、はもーるKOBEで歌っていた、ということ。
 
 個人的には大谷短大輪声会の次にシードを与えてもいいんじゃないか?
 …とまで思ってしまった。(結果は銀賞)
 
 水本貴士、というこの背の高い若い指揮者の名前が
合唱界に広く知れ渡るのも、そう遠い日じゃないかもしれない。
 
 また、この指揮者、この合唱団の演奏を聴ける日が楽しみ!
 や〜「合唱団 々」、イイ名前じゃないか。よく見れば(笑)。
 

 ●「あのひとは」 
 
 故・辻正行先生が指揮をされていた団体は3団体。
 どの団体も入場から並々ならぬ気合いが漲っていて、
一般の2団体は入場時に客席から拍手がおくられていました。
 
 言葉と音楽の関わり合いについて改めて教えられた気がする「水汲み」、
そして合唱曲という表現の限界まで考えてしまった
「ラプソディー・イン・チカマツ」の大久保混声合唱団。
 私は3階席だったために実際の演奏では見えなかったのですが、
演奏後に会場内で放送されていたビデオを見ると、
最後の団員全員歌いながらの拍手のとき、
女声陣が満面の笑顔で手を叩く場面に感動してしまいました。
 歌うということ、そして表現するという意志の強さ、凄さ。
 
 「ゴールド 金賞!」の発表に、
いつまでも泣き続けていた何人もの団員の姿が忘れられません。
 きっと、このコンクールには並々ならぬ思いがあったのでしょう。
 

 静岡合唱団の自由曲は荻久保和明作曲、吉原幸子詩の
「How old am I?」で。
 2曲目の「The Woman」は
吉原氏が実母を看取った後に書かれた「あのひと」という詩。
 谷川俊太郎氏の詩:「生きる」への返詩でもあります。
 
---------------------------------------------------------------
 
             あのひとは 生きていました
             あのひとは そこにいました
             ついきのう ついきのうまで
             そこにいて 笑っていました
 
---------------------------------------------------------------
 
 「あのひとは 生きていました」と、悲しみに沈まず、
むしろ明るめなフレーズが、情感をこめて、さまざまに、
何度なんども歌われていくと・・・視界が滲んでいって。
 しまいにはステージを見ているのが難しくなり。
 
(…静岡合唱団のみなさんは、よく泣かずに歌えるものだな…)
と思いつつ、耐えきれず曲間に視線を下げようとすると、
滲んだステージの中、ひとりだけ、
さっ、と手を目の方へ持っていった男性がいました。
 
 静岡合唱団は銅賞でしたが、
「賞を越えた名演」というのが存在するのなら、
まさにこの演奏がそうだったと思います。
 亡き人を偲ぶだけではなく、生きるものへの賛歌とまで
感じさせた名演奏でした。
 

 大久保混声合唱団、静岡合唱団、プロフィール左の写真、
辻正行先生の笑顔を見ると、
「歌うことの喜び」を改めて教えて頂いた気になるのです。
 
---------------------------------------------------------------
 
             あのひとの 見た夕焼け
             あのひとの きいた海鳴り
             あのひとの 恋の思い出
             あのひとは 生きていました
             あのひとは 生きていました
 



                          (吉原幸子「あのひと」より)
---------------------------------------------------------------
  


●「演奏会感想 目次」に戻る

*このページを無断で使用、転載することをお断りします。