演奏会感想の部屋

 



 

第56回全日本合唱コンクール 全国大会高等学校の部

「第56回全国合唱コンクール高校A・B その6」
2003年11月1日(土)


北海道札幌北高等学校合唱部

武庫川女子大附属高等学校コーラス部
京都府立西城陽高等学校合唱部
山形県立鶴岡南高等学校音楽部

勝手に座談会 
 


 文吾    北海道札幌北高等学校合唱部です。
        (銀賞・混声60名・G4
        自由曲:松下耕作曲
        混声合唱曲集「そのひとがうたうとき」から
        「あい」)

        この団体は、私もファンですし、
        ここと合同練習などで関係の深い
        某一般合唱団の代表と指揮者もこの場にいるので(笑)。

 まぐろ。  ココは客観的な評価ができない!(苦笑)。

 あ〜る   できないね〜(笑)。        

 文吾    …無関係の方にまず感想をお願いしましょう(笑)。
        競り人さん、お願いします。

 競り人   非常に、良かった!

 あ〜る
 まぐろ。  でしょう〜〜〜?!

 文吾    ああもう(笑)。
 
 まぐろ。  この演奏が「原っぱ」だと思うんですよ!

 文吾    凄く音楽的な演奏だったよね。
        楽譜上のリズミカルな部分や
        叙情的な旋律の部分をしっかりと聴かせて。

 あ〜る    69小節からの「春に・・・」からの旋律とか、
        ちゃんと3拍子のリズムがあって、
        5小節をひとつとした旋律になっていましたね。

        …他の団体は「春に」「タンポポが」「いっせいに」
        と何故かブツ切れになっちゃう。
        あれが“出来ちゃう”気持ちが僕には理解し難いなあ。

 競り人   もうちょっとテンポが速くても良かったかな。

 あ〜る   そうですね。

 文吾    え? 各部を充分に表現するためなら
        あれくらいのテンポがいいんじゃないですか?

 競り人   いや、自由曲があれだけ語り口が柔らかくて
        あったかいんやからこそ、
        課題曲ですっと行って欲しかったかな。

 文吾    ああ〜・・・。

 競り人   子どもが遊んでいるだけの無邪気な感覚で
        歌ってもいいかな、と。
        どっちの曲にも思い入れがありすぎたんかな。

 まぐろ。   どっちも自由曲、というか・・・。

 文吾    競り人さんが仰るのは
        課題曲と自由曲との構成、ということですよね。
        うん、確かにどちらが自由曲でも良い演奏だったな。

 まぐろ。  それだけ曲を自分たちのものにしているという事ですよ。

 競り人   そして自由曲を聴いてね、
        「この詩は誰が書いたの?」と
        プログラムを確かめた団体はここだけ。

        それは心と想いが伝わったということやから。

        それまでは他の団体の何の曲を聴いても
        詩人の名前は気にしなかったのよ。
        
        それだけ言葉を大事にしとる、ってのも分かったし
        歌い手と指揮者がテーマに共感できている、
        ってのがよう分かった。

 一同    (同感)  (註:自由曲「あい」の詩は谷川俊太郎氏)

 ながいけ  男声が上手だなあ〜と!

 競り人   ベースが上手い、ベエスがうまいっ!!

 文吾    ベースは私も◎つけてます(笑)。
        テノールは生声がまだ混ざっていたかな…。

 あ〜る   課題曲のソプラノと
        自由曲でのソプラノとテノールは
        ちょっと想いが走りすぎて
        身体を忘れたところがあった・・・。

 一同    ああ・・・。

 あ〜る    「だけどそれがどうした?!」という演奏でね(笑)。

 文吾    や、聴いてて語りかけられたような気がした!

 あ〜る    そうそうそう! きもちいぃんだ〜!!

 文吾    ソプラノがオレだけに向かって歌ってくれてるような!

 一同    (笑)

 文吾    いや、マジでマジで(笑)。
        ・・・聴きながら、うるうる、としてしまったなあ・・・。

 あ〜る   うん、ほんっと〜に良かった!

 文吾    やっぱり難を言えば発声かなあ・・・。
        このままでも高校生としては充分に上手いけど、
        さらに一段上に昇るためには
        プロのヴォイストレーナーの指導が必要かな、と思ったな。

 あ〜る   そうですね、発声を整えるのがね。
        でも音楽はピカ一でしたよ。

 文吾    そう、音楽的という点では一番かもしれない。
        他は、とにかく音楽の「あったかさ」では
        ここに優るところは無いね。

 競り人   正直さ、「値打ちのある銀賞やな」と思ったよ。

 一同    ?

 競り人   「銀賞」と聞いて「残念やな」とも思う反面
        「金」よりも目立つ、値打ちのある「銀」やったと思う。


 文吾    武庫川女子大附属高等学校コーラス部です。
        (銀賞・女声81名・F2
        自由曲:西村朗作曲
        無伴奏女声合唱組曲「浮舟」から「浮舟」)


 あ〜る   ここなぁ…。金賞じゃないのかあ…。

 きよさわ  そう! 今年は行ったかと思いましたけどね〜。

 競り人   課題曲はこの団体に合ってなかった気がしたな。

 文吾    うーん、この曲を演奏した団体の中では
        ここが一番上手かったと思いましたけどね。

 あ〜る   単純にちょっと遅めで、弱めだった気が・・・。

 競り人   うん。なんか奥に引っ込んでるなあ〜、と。

 あ〜る   そうそう。
        …でも・・・上手かったけどなあ〜!

 文吾    いや上手いよ!
        ソプラノの柔らかさや
        旋律のふくらみの美しさなんて凄かった!

 まぐろ。  一番声が透き通っていました。

 文吾    倍音も鳴っていたしさあ、
        弱声も上手いしさあ、
        発声が全体的にとても良いよね!

 競り人   自由曲は妻高校のを何回か聴いているからか
        なにか神秘性というものがあるんだろう、と聴いてると
        人数のせいか知らんけど、
        「もうひとつ来い! もうひとつ来い!」
        …と思っているうちに最後まで行ってしまったような。

 文吾    発声も素晴らしいし、音程も響きも上等。
        ただ、音楽をどこへ向かわせるか向かっているか、
        というポイントが分からないのがやや不安になって。
        
 ながいけ 個人的な考えなんですけど、
        内面の奥深さがなくて、
        そのまま前の方で音楽を造っている。
        生々しさと内面の形とはまた別なんだけど
        「生々しさ」だけの音楽。
        …そんな気がしてしまって。

 文吾    うーん・・・。
        ただ、おそらく、シリアスなものに踏み込まないゆえの
        ここ独特の「たゆたう」雰囲気は非常に魅力的だと思います。
        とても好きな団体なんだけどな・・・。


        京都府立西城陽高等学校合唱部です。
        (銅賞・混声62名・G3
         自由曲:三善晃作曲
         二群の合唱団とピアノのための
         「蜜蜂と鯨たちに捧げる譚詩」から
         「さまよえるエストニア人」)

        素直で爽やかで気持ちがよい演奏でした!
        ベースは深い発声がなかなか良かったし。

 あ〜る   ソプラノだけなんですが、
        鼻か上あごぐらいで、共鳴のポイントが低い。        
        だからフレーズの途中でピッチが下がるし、
        言葉が出てこないんです。

        だけど指揮はとても良かった!
        明快で端正!

 競り人   あ〜る君が好きそうな指揮やったもんね(笑)。

 あ〜る   (笑)。素晴らしかったです。

 競り人   課題曲(高田三郎作曲:水汲み)は
        「歌っちゃダメでしょ!」…という気がするんやね。

 一同    ?

 競り人   しゃべってるものに、
        音の色がついているぐらいでいいのに、
        声でガッ!と行くと・・・ちょっと音を鳴らしすぎかな。

 あ〜る   訥々としたイメージが欲しい曲ですね。
        やっぱりソプラノの発声が他パートとちょっと異質で
        はまらない気がしました。

 文吾    …同意できるんだけど。
        曲への共感が思い入れとなって
        あんなふうな演奏になってしまったのかな、と
        私は好意的に聴きました(笑)。

        自由曲は?

 ながいけ おそらく審査員のほとんどは
        東京混声合唱団のこの曲の初演を聴いていますよ(笑)。

 一同    (笑)

 まぐろ。  個人的に「敢闘賞」を上げます。 

 あ〜る   最後までよく行った、という感じでしたね。
        エネルギーの若さが曲の疾走感に活きていた。
        テクニカルな課題はあるけど
        音楽の推進力という点で印象は良かったんです。
        これからが更に楽しみな学校だな。


 文吾    いよいよ最後の団体です。
        山形県立鶴岡南高等学校音楽部です。
         (金賞・混声138名・G2
         自由曲:クシシュトフ・ペンデレツキ作曲
         「Agnus Dei」)

        福岡県知事賞も受賞しました。

        指揮の西田裕巳先生が
        出番直前に心臓の発作で倒れたことで
        一番最初の出番が、最後になりました。

        課題曲、最初の一声で涙がにじみました!

 まぐろ。  そういうアクシデントを抜きにしても良かったです!

 あ〜る   うん、良かった。

 一同    えっ?!

 文吾    ・・・あ〜る君、もう一度言ってくれる?

 あ〜る   すげえ良かった!

 一同
    おお〜!

 きよさわ  去年はなんだったんでしょうね(笑)。

 文吾    そうだね(笑)。

 あ〜る   (苦笑)。
        自由曲がペンデレツキ、と聞いた時点で
        鶴岡南に合っているな、と思ったし、その通りでした。
        ただ、課題だなあと思っている音程感は、
        特に男声でやはり非常に気になったな。
        もっと全然詰められると思うんだけど。

 競り人   そやね、音程はその通りやね。
        あと自由曲はテンポがちょっと速かったかな。

 あ〜る   指揮者の先生の体調もあるかも知れないですね。

 競り人   ああ。それもあるかもしれんね。
        あとは時間制限を気にしたとか。

        一瞬の、音が重なって音が降りる瞬間とかが
        スッスッスッス先に進んでしまって
        この曲の良さが無くなってしまった。

        でも全体としてはこの曲の持っとるトーンを
        ちゃんと保っていたから、
        それはそれであのテンポでもええんかな、と思ったけど。
        ・・・やっぱりちょっと速かったかな。

        それを抜きにしても、
        「よくこんなの高校生が歌えるな!」とは思ったね。

 文吾    「一般Bグループでも金賞確実!」ですね。

 一同    (同意)

 文吾    …聴き終わってホールの外に出た時
        顔を合わした清水さんと。
        
 清水    「スゴイものを聴いちゃったね〜」って(笑)。

 競り人   西田先生は体調不良のため椅子に座って指揮されていて、
        たぶん本来の力が出せてなかったかな。

        歌い手は自分たちの力を出していたけど、
        指揮者と一体となって、
        もーっと力強い音楽を造るつもりやったんかなあ、とは思った。

 まぐろ。  逆にそういうハンディキャップがあるからこそ、
        歌い手が集中して力が出せた部分が
        あったかもしれないですね。

 あべけん やっぱり「本来の力の80%くらいしか出せなかった」って
        生徒たちは言ってたみたいですけど。 

 競り人   そうか。かえって力をあまり出さなかったことで、
        抑制されて曲の雰囲気が出たのもあったかもね。

 あ〜る   ・・・がんばったな、生徒たち。
        約5時間待たされてね。

 清水    2時にピークをもっていくつもりが
        7時が本番になってしまったわけですからね。

 競り人   ウチだったら「5時間練習できて良かったな!」
        と思うけどね。

 あ〜る   最初から「本番が7時になりました」と
        決まっていれば良いですけどね。
        先生が倒れ、一回緊張が解けて、
        歌えるか歌えないか分からない状況で5時間待つというのは
        苦しかったと思いますよ。

        …更に言えば、出番が繰り上がって動揺もあったであろうに、
        涼やかな愛らしい空気を届けてくれた
        不来方高校の子たちもエラい!
        客としてお礼を言いたい(笑)。

 文吾    確かに。
        動揺があったにせよ、あれだけの演奏が出来たことには
        不来方高校に賞以上の賞賛を捧げたいね。

        鶴岡南も熱く深い、青春を燃やす音、という演奏でした。

        ・・・あ〜る君も納得の演奏だったということで、
        これ以上無いほどの幸せな座談会の終幕です(笑)。

 一同    (笑)


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 <Bグループ全体を振り返って>


 文吾    全団体の3分の2が金賞でもおかしくない名演揃いでしたね。

 競り人   うん、金とか銀とか銅とかさ、
        どうでもよかったね、ホントにね。

        ・・・誰かより上、誰かより下じゃなくて
        そこで広がった音は唯一無二であり、
        良い演奏もうまく行かなかった演奏も
        すべて意味があるということを聴きながら感じていたよ。

 文吾    …良いお言葉、ありがとうございます。
        全体的に昨年より良かった気がしました。

 あべけん それは自分も思いましたね。

 文吾    混声合唱が充実していたような。

 清水    そう、混声がこんなにレヴェル高いとは思わなかった!

 あ〜る   去年より混声が良かったのは同意しますけど…。
        ただ、音楽が女声に比べて練られていない気はしますね。
        勢いとか想いとかはあるけれども、
        それがしっかりとした音楽に乗っかればいいんですけどね。

        ・・・まあ、でも混声が好きです、ぼくは。

 わかち   昨年は出場者として出て
        安積黎明の「静かな雨の夜に」を聴いて
        「本当に雨が降っているみたい!」
        …と感動して帰ってきたんですけど。
        今年は聴衆として聴いて
        「高校生にしか歌えない、できない音楽があるんだな。
        がんばって欲しいな!」と思いました。

 文吾    そういや、今日一度も発言していないけど・・・。

 パープル  えっ?!
 (札幌北高OG)

 文吾    なにかひとこと(笑)。
       
 パープル  え、えぇと、みなさんが札幌北を褒めてくださるのが
        すごく嬉しかったです、OGとして。
        あと、実は昨日、緊張のあまり眠れなくて・・・。

 一同    ええ〜?!

 ながいけ  いい先輩ですねえ・・・。

 パープル  でも今年はとっても楽しかったです。
        良い演奏が多くて。

 文吾    そうですね、良い演奏がいっぱいありました。
        3500円のチケットが安かったですね!
        技術を越えた何かがやっぱり・・・。

 競り人   プロ野球と高校野球との違いみたいなものがあるよね。
        一般のコンクールには存在しないものが。

 あ〜る   …ここにしかないものがありますよねえ〜。

 競り人   音楽的処理から言うと、
        一般団体の物凄い上手な団体よりは落ちるけれども、
        それを学生さんの努力で乗り越えとるとこがあるから。

 あ〜る   一回性のね。
        ・・・言い方は悪いけど「刹那の輝き」ってのもあるし。

 文吾    高校生としての「白鳥の歌」…みたいな。

 まぐろ。  下手なプロ野球より
        高校野球の方が良いプレーする時もありますよ。

 文吾    そうだね(笑)。
        でも、あまりそういうのを『絶対』と認め過ぎちゃうと
        合唱を続けなくなっちゃうのかなあ・・・。

 清水    そういう意味でもね、
        札幌北高が銀賞だったのは
        合唱を続ける動機が増える事だと思いますよ。

 文吾    そうかも知れませんね。続ける動機、として。

 あ〜る   それならぜひ、弥生奏幻舎“R”で続けてっ!

 文吾    結局ソレかよ!(笑)

 あ〜る   ちゃんちゃん♪

 一同    (笑)



 2004年度の全国大会は
10月30日、東京都府中市、
府中の森芸術劇場で開催されます。
 縁がありましたらみなさん、会場でお会いしましょう!


 そして、2003年度の全国大会で演奏されたみなさん、
残念ながら全国大会に進めなかった高校生のみなさん、
本当に本当にありがとう!!!



                              (おわり)



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