演奏会感想の部屋

 

 
  Brilliant Harmony第17回演奏会  
  (Melody,It's LOVE〜メロディーは愛U〜)


 2006年月6月4日(土) 
 川口総合文化センターLILIA 音楽ホール

 昼・夜 2回公演(同演目)
 私が聞いたのは開演 19:00〜の夜の部。


 ◆プログラム 
 <第1部>
  Cantate Domino / H.L.Hassler
  Egyetem,begyetem/Z.Kodaly
  Stabat Mater dolorosa 悲しみの聖母 / G.Pergolesi
  Tota pulchra es とても美しい御方 / M.Duruflé
  Ave Maria / G.Caccini
  Laudi alla vergine Maria / G.Verdi
  Tüzciterák 火のツィテラ / M.Kocsár
  Regina angelorum 天使の女王 / P.Kostiainen

 <第2部>
  「空に樹に・・・」より 生きる / 新実徳英
  チカプ・レキ (小鳥の歌) ―北海道アイヌの9つの唄 / 池辺晋一郎
  「白鳥」より 露営のともしび/高嶋みどり
  「ファンタジア」より 風をみたひと/木下牧子
  「三つの夜想」より ある肖像 / 三善晃
  わたしの海 ―平成17年度全日本合唱コンクール課題曲 / 鈴木輝昭
  「この星の上で」より  ほほえみ 今年 / 松下耕



 伝説の演奏会、「メロディーは愛」(※感想はこちら)
冠されたものがふたたび!
 というわけでCA演奏会の1週間後、にもかかわらず
ふたたび岡山から飛行機で関東へ向かったわけです。

 どの曲もどの曲も、
ものすごぉーーーっく練習されてきたのが分かる、
という演奏で。
 プログラムで松下耕先生の文章の題名は

 (横軸がつくる縦軸)がつくる空間

 …というものなんですが、それぞれの言葉に
 横軸 = メロディー
 縦軸 = ハーモニー
 空間 = えんそうかい

 と、フリガナが付いているんですね。
 まさにその通りで横軸のメロディをキッチリ意識しながらも
縦軸のハーモニーがカチッ、と
しかも素晴らしいバランスで両立している。

 発声も昨年より磨かれている印象で
第1部のVerdiの曲なんて最初は羽のような軽い印象の声が
徐々に重みを増し、実体化していく・・・
そんな初めて聴く女声合唱の響きを体験させてもらいました。

 Kostiainenの2重合唱も均質なひとつの声が(ユニゾンの美しさ!)
広がり、分かれ、そして集合からひとつの声が生まれでて
さらにその声へ、声が集まり加わっていく・・・、のような。
 澄み切った世界のもと、すべての音がクリアに同時に聴こえる。
 これは本当に静かな、美しい世界でした。

 第2部の邦人作品でも
名曲がいくつも演奏されたんですが、
技術と練度が非常に優れているので
定番の曲でも初めてのように聴こえる曲が多数。

 新実徳英先生の「生きる」の最初のヴォカリーズの素晴らしさ。
 主旋律、副旋律、装飾、
澄み切った世界の中で明確に現れる音楽というもの。
 
 高嶋みどり先生の「露営のともしび」や
三善晃先生の「ある肖像」など
  “気合”をことさら入れなくても、
和音の精度、そして響くポイントがしっかり掴まえられているので
フォルテッシモはゴシックの大伽藍のように壮麗で
しかも雑味が無い。
 さらにフォルテッシモの後にすぐピアニッシモがある表現でも
その弱音がまったく乱れず、平然と色、表情を変える…!
 推移が実に自然なんですよ。すげー。
 この2曲には旋律に「オトナ」の匂いがあったのも◎。

 和音和音、それぞれの色と狙い、
そして曲に合わせての声の変え方、響きの変え方、など。
 「女声の響きって、こんなのもあったんだ!」
 …などと改めて感心するほどの素晴らしさ。

 さらに序盤から終盤まで、流れを計算尽くしたような適切な構成。
 (それゆえ、冒頭が“さりげなく”
  引き付けられることがやや少なかったのですが)

 残念だったことを書くとすれば。
 生演奏なのに、ちょーっと
 「スタジオで何テイクか録音したものの一番良いのを再生」
 …のような、何かライブ感、というか
 「今この曲を歌っている」というヴィヴィッド感、というものが
過去に聴いてきたブリリの印象からすると
全体では失われていたのが残念と言えば残念でしたね。
 ステージ上での 「のるかそるか」。
 「どこかへ向かうベクトルがあまり感じられない」ような印象。
 その場で完成されすぎている、とでも言うか。
 練習しすぎたのかな?

 あと今回は、一般のお客様も楽しめるようなハジけた、
合唱の裾野を広げるような曲が選曲されていなかったこと。
 一応、“合唱マニア”?の私としても、
そういうケレン味たっぷりの曲を、
松下先生とブリリがどうセンス良く料理するか、
ということが楽しみだったので
今回の演奏会はいつもとはちょっと狭い分野での勝負、
という印象になったのが残念。
 (そういう曲があったほうが正統派の曲も
  活きると思うんですけど。
  あ、アンコールで名編曲「The Typewriter」はやってくれましたが)


 それでも、何度も書きますが
これだけの曲をここまで演奏できる、というのは
本当に素晴らしいことだと思います。
 一昨年よりも昨年、昨年よりも今年、と
演奏技術が年々上がっている印象の団体なんて
そう無いですよ。

 女声合唱をやっている人。
 あるいは指導者、それに準じた人、
あるいは現在の日本の合唱水準はどの程度までなのか、
ということに興味がある方には間違いなくオススメできます。
 あと指揮者:松下耕先生がお持ちの音楽を
人間味あふれる「音楽」としてこの世に現すことができる団体として
Brilliant Harmonyは本当に優れている
“演奏家集団”だと私は思っているので。

 藤井先生率いるJuriも
「Juriあってこその私」と、藤井先生は言われているらしく。
 合唱団ががんばって、指揮者を刺激する。
 そして指揮者がいっそうがんばる。
 ・・・これはなかなか美しい関係だなあ、と感じ入ったのです。

 松下先生のお力ももちろんですが、
ブリリ団員同士の切磋琢磨が感じられる、そんな演奏会でした。




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