合唱団訪問記

第31話

 

Brilliant Harmonyの“うた”


「合唱団訪問記」

 『Brilliant Harmony訪問記』

その4



 <21:43>

 「早く!早く!!」
…と団員さんを急かす松下先生。
 (楽譜の多さもさることながら、
  曲によって立ち位置が変わるので大変!)

 わー、いつのまにやら、もう練習終わりに近いな〜。

 そんな慌ただしい雰囲気の中
 『静かな雨の夜に』
 (もちろん松下耕先生作曲!
 2002年度全日本合唱コンクール課題曲!!)の
前奏が美しく流れると、雰囲気が一転して・・・。

 うわー。ほんと、ホンット、いい曲だなぁ!
 浅井先生のピアノも、雨にかすむ世界を表現しているようで・・・。


 いつまでもこうして坐って居たい」


 見事なBrilliant Harmonyの歌が入った途端。

 松下先生「(パートの)真ん中の音が無いよ!」…と厳しい声。

 再び指示を出しながら1曲を通すと、すかさず松下先生。

 「もっとセンシティヴになってよ!
  神経を遣って・・・。
  あまりにも旋律がズタズタ切れているし、
  吸い方(ブレス)も荒いし・・・」

 やー、そんなことも無いと思うんですけどねえ。
 この曲だけは、なんだか先生、厳しい雰囲気だ。
 と、思ったら。

 「・・・今年のコンクールで、
 いろんな合唱団が丁寧に歌ってくれると思うんだ。
 本当に、丁寧にね」

 そうか、そういう気持ちが入ってたんですね。
 と、思ったら。



 「いろんな、とか言って、



  1団体も歌ってくれなかったりして?!(…団員さん爆笑!)




  ・・・歌ってくれたらいーなー!!


 (はい、この曲、高校や一般合唱団でとてもとても多く歌われたのは
  みなさん周知の事実!)


 耕友会:松下先生が指揮する女声合唱団では、
コンクール、この課題曲は選択しない、ということ。
 だからこそ、歌える場で大切に歌おう、という気持ちが
先生にも団員さんにもありました。

 各部分を練習した後の、通したこの曲は。

 「さすが!」・・・と言うしかない演奏でした。


 <21:52>

 松下先生「シューベルト、いっとく?!」
 (Schubert.F Der 23.Psalm 詩篇第23番)

最後の最後まで時間を使おうとする先生。

 ・・・が、さすがに練習終了!
 お疲れさまでした〜。


 やー、本当に時間を1秒たりともムダにせず、
かといって時間に急かされ、雰囲気が険悪になることもない。

 松下先生の醸し出す雰囲気もそうですが、
団員さんの「やるべきこと」をしっかり理解した上で、
“うた”を楽しもう、という姿勢が本当に素晴らしかったです。

 この「訪問記」を書く上で、練習を録音しているのですが。
 聴き返すと、松下先生が特に指示を出していなくても、
Brilliant Harmonyのうたは、
自然にどんどん良い方向へ変わっていくのですね。


 2002年度の全日本合唱コンクール全国大会、
一般Aの部でも念願の金賞を受賞し、
国際的なコンクールでも高い評価を得ているBrilliant Harmony。
(詳しくはBrilliant HarmonyHPでのProfileをご覧下さい)

 しかし一般女声合唱団の宿命として、
Brilliant Harmonyの、この13年間の歴史も
決して順調、とは言えないこともあったようです。
(註:取材時は2002年5月7日のため、約13年間半の歴史)

 Brilliant Harmony、最初は尚美学園の卒業生を
中心として出来た団体だそうですが。
 一時期は団員数の減少により、
団の存続も危ぶまれた時期もあったとか。

 練習会場から暗い外に出、雨の降る中
連絡の確認をする団員さんたちを見つめながら。
 

 「強い。
  そう、力強い合唱団ですね。

  ・・・良い合唱団だと思います」


と、この13年間を思い返すように語る、
松下先生の言葉が印象的でした。


 「継続は力なり」…という言葉のように、
続けていくことで生まれるものもある。
 その想いがこめられていて。


 私自身は「しなやかな強さ」…という言葉が浮かびました。
 柳の枝のように、あらゆる物事に柔らかく適切な対応をしながらも
その芯には、確かな、しっかりとしたものがあるような。



 この4日後の土曜日。
 Brilliant Harmonyの演奏会が、行われました。
 その様子は、「演奏会感想」内での
 私の拙い感想で我慢していただくことにして。

 演奏会終了後、
 Brilliant HarmonyのHP掲示板に観客の、
多数の感動的な書き込みがありました。
 (私はあそこまで多くの書き込み、
  そして本当に感動したことが分かるような掲示板を
  いままで見たことがありません)

 その感想に応える、Brilliant Harmony、一団員さんの
書き込みが、この合唱団の素晴らしさをすべて表しています。

 ここにその文章を転載させていただきます。

******************************
ご来場本当にありがとうございました。
投稿者:(匿名にさせていただきました・文吾)
投稿日:5月13日(月)21時05分36秒

>定演にご来場くださったみなさま
先日はBrilliantの演奏会にご来場くださいまして
本当にありがとうございました。
また、たくさんの書きこみ、とても嬉しいです!
長い時間にもかかわらず真剣に聴いてくださる皆様に励まされ、
1曲1曲に心を込め、味わい、楽しみながら歌うことができました。
そして、終演後の客席が明るくなってからもやまない
盛大な拍手に心打たれました。
音楽に身をまかせ、心が解き放たれた、本当に幸せな時間でした。
ありがとうございました。

個人的に。
今回の演奏会に来てくれた合唱をほとんど聴いたことのない知人が、
「涙腺が緩むほど感動した」と言ってくれました。
私にとって、これ以上ないくらいの嬉しい言葉でした。
”合唱の楽しさ、奥深さ”
自分では良くわかっているつもりだけど、
合唱を知らない人に、これを伝えることはなかなか難しい。
『新しい歌』についてで信長先生もおっしゃっていますが、
「合唱曲が、あるいは合唱という媒体が、
 ”うた”としての力を真に持ち得るか」
これは、私にとっても、合唱活動を続けるにあたっての
とても重要な課題の一つだったのです。
私たちの演奏を聴いて、合唱の楽しさや奥深さに触れ、
私たちの愛する合唱への”想い”を少しでも共感してくれる人が
いてくれたなら、これほど嬉しいことはありません。

去年の鈴木輝昭先生の個展によって、
合唱の”芸術性、人の声の持つ可能性”を。
今年の演奏会では、合唱の”楽しさ、歌うことの喜び”を。
この2年間で、合唱の両面を満喫できたように思います。
これからも私の知らない合唱のいろんな面を知りたい!と思いました。

合唱を続けてきて本当に良かった。
ブリリのみんな!これからもがんばろうね!

最後になりましたが、
ご来場くださったみなさま。
松下先生、森永先生、浅井先生、長井先生。
信長先生。
ご協力いただいた全ての方にお礼申し上げます。
本当にありがとうございました。
長々と失礼いたしました。

*****************************



 長く合唱を続けていると、
その楽しみ、そして「歌う」ということを、
いつのまにか見失ってしまうことがある。

 そんな時、私はBrilliant Harmonyの、この練習の録音を聴き返す。

 松下先生との楽しいやりとりの中、
Brilliant Harmonyのうたが、
私の中に沈んだうたを、よみがえらせてくれる。

 “うた”によって光が射すように。

 沈んだうたを浮かび上がらせ、
 世界が、ふたたび開かれてくるような気がする。

 
 もしもこの文章を読んでいるあなたが
「歌う」ということがなにか、忘れかけてきたら。

 是非ともBrilliant Harmonyの演奏を聴いて欲しい。


 表現を重ねることによって、深く、熱く、
 そして不思議に透明さを帯びていく
 Brilliant Harmonyのうたは、
 きっと、あなたのうたもよみがえらせてくれるから。


 そして、もっと“うた”を愛している自分を見つけられるから。




             (Brilliant Harmony訪問記  おわり)



追伸
この「合唱団訪問記」をご覧になった感想、意見、要望等を
心からお待ちしております。
 メールは  fwny9752@mb.infoweb.ne.jp  まで。 
どうかよろしくお願いします! 
  文吾