早稲田大学混声合唱団:団員さんの声 その7

 
 
●まとめ、として

 文吾  パトリに立候補する時の
      ケイコさんの回答を読ませてもらったら、
      早混の長所は

      『自主性を喚起するような
      技術向上のシステムが整っていること』
      
      と、書いていたね。
      
 ケイコ はい。“向上心が全てを支えている”、
      …という気がしますね。

 文吾  個人個人の目標がちゃんと設定されていて、
      努力を着実に重ねるシステムがしっかりしている、
      という印象を持ったんだけど。

      サブリ、という技術系の割合が多いから
      「人に教えることによって自分も上手くなる」つまり
      「合唱団が上手くなる」…とも思うし。

 ケイコ そうですね、それはあります。
      ・・・大変な部分はあるんですけど(苦笑)。

      あと、ハジけるところはちゃんとハジけて(笑)。
      しっかりやる部分はしっかりやる、という
      サークルとしてメリハリが効いているのがスキですね。

 文吾  ほう。

 ケイコ 最初に新入生だけで
      上級生とは全く歌わない練習を
      3ヶ月間やるんですけど。
      そこで横の絆(きずな)ができて。
       
 文吾  あー、その練習で発声や楽典の基本的なことを
      教わるんだね。

 ケイコ はい。内政が面倒を見て、
      幹事学年から別の「新入生指揮者」が
      練習を見るんです。
      
      だから上の学年に行ってツライ時も、
      「みんながいるからがんばれる!」 と言うか…。
      あと、特練やADで縦のつながりもできますし。  

 文吾  なるほどねえ。

      あ、早混の演奏会プログラム見て笑ったのは
      新入生勧誘の言葉が
      “物理的に友達100人できるよ!!”…って(笑)。

 ケイコ あはは(笑)。
      そうです、フツウにできますね、100人(笑)。

 文吾  ・・・しかし、学生の気質も変わって
      今の時代にこれだけの人数の規模で
      これだけのレヴェルを保っていられるのは
      スゴイことだよ。

      “あんびりーう゛ぁぼぉー”!…だね(笑)。

 ケイコ (笑)。
      ・・・やっぱり大学合唱団、というものが
      時代に合わなくなって来ている気がしますね。
      みんな授業にバイトに資格に忙しいというか・・・。
      サークルにまとまった多くの時間やお金を
      つぎ込むのに勇気がいるというか。

 文吾  うぅむ・・・。

      ・・・ケイコさんがOGとなっても、
      10年後も早混が、今の規模とレヴェルを
      保っていられるといいね!

 ケイコ そうですね、ホントに。
      時代に合ったかたちで
      どんどんやり方は改善していって、
      その上でクオリティをちゃんと保ち
      高い意識で活動してくれればいいなあ、
      ・・・と思います。

 文吾  はい。
      ケイコさん、今日は長い時間ありがとう!



 ●インタビューの終わりに


 まずは初期段階のこのインタビュー原稿を読み、
率直な感想を送って下さった方々に感謝します。

 そして文中のとても見やすい表を作って下さった、
まるじゅんさんに深く感謝を!

 さらに素晴らしい音楽活動をしている
早稲田大学混声合唱団のみなさんにもお礼を。
 定期演奏会のあの感動がなければ、
このインタビューもあり得ませんでした。

 最後に、なによりもケイコさんに。
 インタビューからUPまでの長い時間、本当に本当にありがとう。
 あなたの今、そして未来が輝くことを心から願っています。

********************************

 さて、このインタビューを読まれた
みなさんの感想がやはり気になるところだ。

 他の学生・一般合唱団の方ならば
 「こんなにたくさんの練習時間や合宿、そのものがムリだ!」
 …などと思われるかもしれない。

 ただ、この練習システムの根幹は
「その3」,「その4」の「特練・AD」「サブパートリーダーの多さ」に
現われるように「個人の育成」「役割の分担制」だと私は思う。

 ここで私の経験を話すと。
 学生時代、安積女子高校(現・安積黎明高校)の
演奏に夢中になり、安女の練習方法のひとつである
 「先生による、団員個人の徹底的なチェック」に
興味を持ったことが、このインタビューにつながってくる。

 コンクール演奏曲を一人ずつ歌わせ、
合格基準に達するまで何回も挑戦させる、
という練習方法などを記した
「愛と栄光のハーモニー」という本を読み。
 (元・安積女子高校:渡部康夫先生著。講談社。
  残念ながら絶版ですが、練習方法以外にも
  素晴らしいエピソードが詰まっており、
  本当に感動的な本です)
 大学時代、その「オーディション」をグリークラブで実践しようとした。
 ・・・が、団員の圧倒的な反発をくらい、断念。

 今から考えると、「一人ずつのオーディション」
…という行為だけでは、
初心者も混ざる合唱団では効果に疑問な部分がある。
 ケイコさんの
 「落とすためにオーディションはやるわけではないので…」
 という言葉にも反する。

 「オーディションに受かるため、合格基準に達するまで」の
「個人の技術養成」をどうしていくか、という考えが私には全くなかった。
 これでは猛反対されるのも当然だ。
 (もちろん当時は「やる気ねえなあ。だからダメなんだよ!」
 と、ひとり憤慨していたのだが・・・)

 「個人の育成」…という考えから練習を見つめてみると、
例えば「VOX GAUDIOSA」の練習で、
「生まれ月が奇数・偶数」さらに「社会人か学生か」。
 そんな風に歌う人間をアンサンブル中に減らしていき、
個人の自覚を促す、というのもそうだし。
 あるいはもっと初期段階だと、
前後左右に同じパートがいない隊形で練習する、というのも
その考えに含まれるかもしれない。

 「役割の分担制」でも、
最初の簡単な体操や発声練習を持ち回り制にする、
というのもひとつの方法だろう。
 オーディションを導入するのは失敗したが、
私の場合、練習の最初にマンツーマン、あるいは一人対二人ぐらい、
技術系・上級生と下級生の組み合わせで
毎回15分程度の短い時間、
基礎的な発声などの少人数練習を取り入れることは実現した。 
 この練習方法は技術系に関わることが無かった上級生に
技術系への役割を分担させるだけでは無く
人へ教えることによって、自身の発声への自覚を養い
成長してもらいたい、とも願うものだった。


 早稲田混声の練習システムそのものは
実現が難しい団体が多いと思うが、
「個人の育成」「役割の分担制」…という考えから
早稲田混声の練習システムを「ひとつの到達点」と見て、
自分たちの合唱団を見直してみると
新しく見えてくるものがあるかもしれない。

 そしてその新しく見える「きっかけ」となるためにも、
このインタビューをこれだけで完結させないためにも、
読まれた方の意見・感想が私はぜひとも知りたい。
 特に体験談として、
「自分の合唱団ではこうだった」
「こんな練習で効果が上がった」などの話は大歓迎だ。
 あるいは私のような失敗談でも全く構わない。
 早混の練習システムを「ひとつの到達点」としたように
異なるいくつもの方法論、到達点の話があってもいい。
 もちろん、到達点を目指す途中の話も大いに結構だ。

 「完璧な練習システム」というのは存在しないかもしれないが、
練習システムについて考え、他の練習方法を多く知ることは
合唱団の活動にとって非常に有益だと私は考える。
 ルーティン・ワーク連続の流される練習は面白くないでしょう?
 
 掲示板への書き込みでも、
私宛のメール(fwny9752@mb.infoweb.ne.jp)でもどちらでも結構です。
 みなさんの意見がまとまったら、
また新しいコンテンツとして発表することがあるかもしれません。
 または意見を寄せて下さった方に、私が直接聞きに行くことがあるかも。


 このインタビューが読む人の心にきっかけを生むことを強く望みながら。
 私は、みなさんのご意見を待っています。

                                     
 (文吾  記



●「時の声 目次」に戻る